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ドーム兄弟の歴史とサインを見極める5つの方法(daum nancy)

 2015/12/23 アールヌーヴォー・アールヌーボー・アールデコ ドーム兄弟
この記事は約 11 分で読めます。 12,294 Views

アンティークテーブルウェア店長の妹尾です。

 

本日も当店のブログをご覧下さり、誠にありがとうございます。

この記事は、ドームナンシー・エミールガレを扱いだして40年の経験があるギャラリー麻布の店長さんから指導を受けながら書いた記事となっております。

 

お店が気になる方は、こちらのギャラリー麻布の店内を紹介してる動画をご覧ください↓

ドーム兄弟(ドームナンシー)の歴史や魅力を知りたい方はこちら↓

ドーム兄弟(daum nancy)を購入するならこちら
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アールヌーヴォーを代表するガラスの工芸家といえば、やはりエミールガレを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

 

しかし、エミールガレと同等(一部ではガレを超越したもの)の作品をこの世に残している工芸家、ドーム兄弟も忘れてはならない工芸家です。

それでは、本日はエミールガレと肩を並べるまでに成長していった、ドーム兄弟の歴史についてお話をしていきます。

 

ドーム兄弟の歴史

※左が兄アントニン・右が弟オーギュスト

ドーム兄弟(ドームナンシー)の代表作品アザミのリキュールグラス

※『ドーム兄弟の代表作品アザミのリキュールグラス』

 

 

ドーム兄弟、エミールガレ共にアザミを描いた作品をたくさん残しています。

 

なぜかと言いますと、アザミはナンシーの州の代表する州花だったからなんです。

 

ナンシーにドーム兄弟在り

 

パリやロンドンに負けない、芸術性の高いアール・ヌーヴォーの街であるナンシー。

 

この街では数多くの芸術家や陶工が生まれ、大都市に匹敵する地方都市として栄えるようになりました。

 

 

1番有名なのはエミール・ガレというガラス工芸の職人です。

 

彼は生まれも育ちもナンシーで、生涯をそこで過ごしつつ発展に尽力していきました。

 

生まれこそ違えど彼と同じようにナンシーで育った職人で有名な人物がドーム兄弟の2人です。

 

ガレとは違った作風でありながらも、後にナンシー派という1大グループに所属することになるほど、ナンシーを愛していました。

 

ここでは2人の簡単な生い立ちから、彼らの作品を中心に紹介していきます。

 

 

 

ドーム兄弟の生い立ち

兄であるオーギュスト・ドームは1853年に、弟であるアントナン・ドームは1864年に、ガラス工芸経営者のジャン・ドームの子供として生まれました。

 

 

元々はロレーヌ地方のビチュに住んでいましたが、1872年にナンシーへと移住することになります。

 

ドーム兄弟はそれぞれ1878年、1887年から父のナンシーのガラス工場を手伝うようになり、ガラス作品の製作に務めました。

 

戦争の影響で住処を移すことになったのです。

 

そんなドーム家ですが、その後のナンシーにおいてドームナンシーの名を轟かせることになります。

 

 

 

輝かしい功績と活躍

ガレがその名を世界に知らしめた1889年のパリ博において、ドームナンシーも出品していました。

この時はテーブルウェアを出品していましたが、1891年に新しく装飾工芸ガラスにも取り掛かるようになります。

 

そして1897年にはブリュッセル万国博覧会で金賞を取り、ガレに負けず劣らずの活躍を見せていきます。

 

 

1899年にアンテルカレールという、ガラスにガラスをかぶせる立体的な表現技法の特許を取得すると、1900年のパリ万国博覧会でも大賞を手に入れます。

 

この技法がドームナンシーの作品の特徴的な技法にもなっています。

 

ドーム兄弟はその後も新しい技法を生み出したり、優秀な芸術家をナンシーに呼んだりと幅広い活躍を魅せます。

 

ガレ亡き後もドーム兄弟は第一線で活躍し、アール・デコ・スタイルの時代にもその名を知らしめています。

 

 

サインから見極める真贋の目を身につける

ドーム兄弟の歴史、どんな作品を作って来たかが分かった事によってドーム兄弟の作品を手にしたくなってきませんか。

魅力的な作品がたくさんあって、ついつい飾りたくなっちゃいますよね。

 

『ちょっと待って下さい』

 

ドームナンシーと書いてあればそれでいい訳ではないんです。

 

こんな経験ありませんか。

 

・ドーム兄弟の偽物の作品ってたくさんあってどれが本物でどれが偽物か分からない。

 

・エミールガレ、ドームナンシーの花瓶、ランプをコレクションしていきたいんだけど偽物掴ませれたら嫌だなぁ。

 

こんな悩みって読者様にもあると思います。

 

と言う訳で今度は、ドーム兄弟のサインの見極め方についてお伝えしていきたいと思います。

 

フランスアンティークのなかでも絶対的な美しさを放つ「ドーム兄弟」ここからはドームの作品のいくつもある、サインをご紹介していきますね。

 

ドーム兄弟とは言うけれどデザイナーによって作品が違う?

ガレは個人の才能を存分に発揮した作品が多いのに対し、ドーム兄弟はいろいろなデザイナー、画家を集結させて工房を運営していたマルチプレイヤーでした。

 

そのため、ドーム兄弟の作品にはいろんなジャンルの商品が存在しており、たくさんのサインがあります。

 

また、この様にいろいろなデザイナーが工房で作品を作っていたので、自然といろいろな技法が生まれて行った事も特徴です。

 

・『下記は全て本物のサイン』

ドーム兄弟(ドームナンシー)さまざまな本物のサイン一覧

 

・『下記の商品のサインは偽物の商品』

このサインの特徴はサインこそそれっぽいですが、商品を見て頂ければ簡単に見分けがつきます。

 

ドーム兄弟(ドームナンシー)偽物のサインドーム兄弟(ドームナンシー)偽物のサイン

ドーム兄弟(ドームナンシー)偽物のサイン

 

下記の作品は下段左の商品なのですが、木も生えており風景を描いた作品の様に見えます。

ドーム兄弟 偽物の商品

しかし、残念ながらこの商品は偽物です。

まず、この様な両端に耳がついた作品はありません。

また、ドーム兄弟の作品はガレの作品と違い、いろいろなデザイナー・画家を集結して作品を世に出しています。

 

いろいろなジャンルがある中で、ある程度の作品の形というのは決まっています。

そして、風景が描かれた作品が存在するのも事実です。

では下記の作品を見ていきましょう。

ドーム兄弟(ドームナンシー)の偽物

ドーム兄弟 偽物と本物の比較

上の画像は、左側が本物で右側が偽物になります。

 

 

ぱっと見、素人であれば見分けがつかないと思いますが、木々の部分をよく見て頂きたいのですが本物は細部までしっかりと色が入りさまざまな色を使い陰影が作り出されています。

偽物は、一色だけであり平面であり奥行きは何もありません。

また、サインが横広いのも偽物の特徴です。

本物であるならば、もっとスマートなサインに仕上がっています。

 

このように、ドーム兄弟の作品は細部にまで徹底して作り込まれているのに対して、偽物はそれっぽくは見えてみかなり簡素に作られているのです。

 

ドーム兄弟(ドームナンシー)の偽物ドーム兄弟(ドームナンシー)の偽物

これらも偽物です。

しかし、個人的には紫の花(おそらくスミレを真似してるのだと思われます)の作品は、すごく良く出来ていると関心出来るレベルです。

見分けるポイントは花や葉、枝の太さになります。

本物のドーム兄弟の作品には、花や植物などの題材は、かなり多く採用されています

ガラスで作品を作り出す際に、細部まで拘ろうとすると必然的にそれらの輪郭は細くなっていきます。

下記の3つの作品をご覧ください↓

ドーム兄弟-オリジナル-スミレの花の花瓶

こちらは、ドーム兄弟オリジナルのスミレの花が描かれた花瓶になりますが、偽物と比較して葉の葉脈は鮮明に1本1本描かれていますし、全て細く繊細に作り出されているのが分かると思います。

偽物を作る個人や会社は、そういった細部までの仕上げを疎かにすることで、安く大量に作ることができるのです。

やはり細部にまで神が宿るものは、作りを見てみると繊細で丁寧ですし、それが芸術性を生み出しています。

 

ちなみにこれらの偽物のほとんどは、イスラエルやルーマニアで作られています。

 

 

下記の商品は一見すると本物の商品に見える作品ですが、こちらの商品も偽物です。

ドーム兄弟の偽物作品

見るべきポイントはサインです。

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サインが背景と色の違いが無く見えづらいですが、この作品のサインはNANCYの下にある横の2本線がありません。

 

この様な作品はアプリカシオンを使った技法で、本物の様に見えますがガラスの色味に深みが無く葉っぱも花も雑に作られています。

 

以上偽物の作品の紹介でした。

これからは本物の作品の紹介です。

 

色鮮やかな作品の数々

ドームナンシーの作品の特徴はやはり色彩の豊かさです。

 

初期の作品はエナメル彩色によって絵付けを施していて、きめ細かくはっきりとした美しさの葉や花などの植物の姿が見られます。

 

虫などの生物を描くことの多かったガレとは違って、ドーム兄弟は圧倒的に植物をメインに描いています。

 

初期の作品は非常にはっきりとした色合いで、花の形も明確に描かれています。

しかし、アンテルカレールやヴィトリフィカシオンなどの技法を生み出すと、その色合いの数を増やして輪郭を少しぼかすようになります。

 

これは1色ではっきりと描かれている作品よりも、より幻想的なガラス作品としての魅力を引き出すことになり、非常に高い評価を得るようになります。

 

下記はドーム兄弟の「代表的な作品」で、全て国内海外でとても人気なモデルになっています。

 

歴史の所で紹介させて頂いた代表作品以外は、ほとんどシリーズ化されている商品ばかりですので、シリーズがある程度解る様になれば、どれが本物でどれが偽物かすぐに判定出来るようになりますよ。

 

下記の作品は形やサイズや形が変わるだけで、描かれている植物、風景はシリーズ化されておりますので参考にされて下さい。

 

 

※ここに載っていない商品もたくさんあります、ここで上げるのは一例です

ドーム兄弟 オリジナル フクシアの花の花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)オリジナルの冬景色の花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)オダマキの花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)シクラメンの花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)ヒナゲシの花の花瓶シリーズ

ドーム兄弟(ドームナンシー)ムラサキナズナの花瓶シリーズ

ドーム兄弟(ドームナンシー)沈丁花の花の花瓶シリーズ

ドーム兄弟(ドームナンシー)さまざまな風景の花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)チューリップの花瓶

ドーム兄弟(ドームナンシー)矢車菊の花瓶

 

いかがでしたでしょうか。

 

初めの方は真贋を見分けるのに難しさを感じるかもしれませんが、真贋を見分ける一番簡単な方法は、他の商品もいろいろと見てみる事が一番だと思います。

他の商品を見る事によって、自然とドーム兄弟がどのような作品を世に生み出して来たのかが分かる様になってきます。

 

 

 

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ドームが請け負ったダモン(DAMON)商品

 

ダモンはルイ・ダモンが1887年に創業した小売業です。

 

そのサインはパリのマドレーヌ広場にあった”Vase Etrusque”という高級工芸品店で売られたガラスや陶器に見られます。

 

ダモンのサインが入ったガラス細工の多くは、ドームに発注したもので、ダモンは自分のアトリエで加工とサインを加えて販売していました。

 

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ドーム兄弟が請け負ったDAMONブランドのサイン

これらがドームが手がけた、ダモンのガラス製品。

 

ガラスの内側を波打ったように金で彩る加工がなされています。

これは当時イタリアのヴェニスで流行していた装飾方法で、フランスでも多くのガラス器に施されました。

 

花の絵付けも含め、これらの細かい加工はダモンによって手がけられました。

 

それぞれにDamon & Delenteのサインが入っています。

 

Delenteはダモン共同経営者の名前ですね。

 

現在はすでに、ダモンの会社自体はないのですが、店舗はフランスのガラスメーカー、「バカラのパリ本店」となっていて、Damon & Delenteの名前で経営されています。

 

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ドーム兄弟の力

かの有名なガレはガラス工芸の職人という肩書だけでなく家具の製作にも関わっており、その活躍の幅は広いです。

 

ドーム兄弟もまた、ガラス作品を作るだけという事はありませんでした。

 

彼らはガレと同じように博覧会で実績を残すと、自分たちに協力してくれる仲間たちを集めるようになります。

 

アマルリッタ・ワルターやルイ・マジョレルなどのデザイナーや画家も、彼らが集めた仲間です。

 

 

人付き合いを苦手としていたガレが出来なかったことを、ドーム兄弟は率先して行っていました。

 

これがナンシーをより活気づけ、そしてナンシーを現代まで発展させていくことにも繋がりました。

 

形は違えど、彼らもまたガレ同様にナンシーを愛し、そしてその素晴らしさを世に広めた重要な人物なのです。

 

エミールガレが唯一ライバルと認めたドーム兄弟は、ガレとは違うまた別の形で大衆に受け入れられていったんですね。

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妹尾 満隆

妹尾 満隆

合同会社SENOO商事の代表をしております妹尾満隆と申します。

ウェブという情報を発信してる人が見えてない中で、いろんな間違った情報がネット上にあるのを度々見かけます。

特にアンティークにおいては

・間違った情報
・信ぴょう性のない情報
・そもそも情報がない

などたくさんの課題がありました。

そこで私は、これまでのお客様との取引の実績、知識、経験、情報を元に正しい情報をウェブを通して発信していくことを会社の方針と掲げました。

ただ物を売る会社ではなく、これまでブラックボックスとされてきてた商品の真贋の見分け方を発信するというのが大切なことではないかと思ったからです。

なぜならアンティーク品の場合は情報量の不足から、買い手側が圧倒的に不利な立場にあったからです。

このアンティークの世界をもっとクリーンで、信頼のおける分野に成長させていく事が私の使命だと思っております。

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