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バウハウスの理念を詰め込んだ時計― パテック・フィリップ カラトラバ(レファレンス96)

パテックフィリップ
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カミカ
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パテック・フィリップの歴史

 

パテック・フィリップの素晴らしさをわざわざ言葉にするのは少々野暮かもしれません。
この時計は世界屈指の品質を誇る名品なのですから。

 

複雑な機械構造の美は世界一愛されている時計と言っても過言ではないでしょう。

 

腕時計は富を象徴するアイテムの一つです。
そのアイテムに明記ならではの機能性とうっとりするような品を合わせ持った時計。

それこそがパテック・フィリップの魅力なのです。

 

機械時計の開発を進めてきた革新的な職人たちが生み出した機能の一つに世界初のパーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)があります。さらに機械時計に定評のあるパテック・フィリップでは驚くことにクォーツの個体を利用した時計の開発にも成功しました。このように機械時計の技術開発の先頭には必ずパテック・フィリップが登場します。

そしてこの社名が広く知ら渡ったのはシンプルな美しさが光る時計、パテック・フィリップのカラトラバ(1932年レファレンス96)の初期モデルの成功がきっかけでした。

 

 パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 イラスト

左:パテック・フィリップ カラトラバ(レファレンス96)の原画。作者はデヴィッド・ペニー

右:パテック・フィリップ・ミュージアムで展示されている初期のカラトラバ(レファレンス96

 

 

パテック・フィリップの歴史

 

時計の名品を提供し続ける現在のパテック・フィリップからは一度会社が金銭面で危機的状況に陥っていたなんて想像できないでしょう。スイスの時計メーカーとして始まったパテック・フィリップは流行に流されない確固たる信念がありました。その時計メーカーとしての頑固さが彼ら自身の首を絞めることになるのでした。

 

20世紀はじめ、パテック・フィリップはいくつもの特許を取得し、著名なコレクターたちがいたものの、危機的状況になってしまったのでした。

 

この危機を救ったのが1932年にパテック・フィリップを買収したジャン・スターンとチャールズ・アンリ・スターンの兄弟でした。彼らの家族はすでにファブリーク・デ・カドラン・スターン・フレール(Fabrique de Cadrans Stern Feres)という会社を経営していました。この会社はパテック・フィリップの時計の部品を供給していました。航路を使った貿易にも精通していたスターン兄弟はこれまでブランドを支えていたハイエンドのコレクターたちだけでなく、より広くパテック・フィリップを知ってもらう事、つまりは市場拡大を試みることが成功への鍵だと考えました。そのために作られたのが前述した名機、パテック・フィリップのカラトラバ(レファレンス96)でした。

 
スターン兄弟

写真:ジャンとチャールズ・アンリ・スターン兄弟

 

 

パテック・フィリップを救った一本の時計― カラトラバ(レファレンス96

1930年初め、腕時計は比較的新しい製品でした。その需要が急激に伸びたきっかけが第一次世界大戦でした。その後すぐ、日常使いの面でも腕時計はその機能面と正確性から数多くのファンを獲得しました。

 
パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96

写真:パテック・フィリップ カラトラバ(レファレンス96

 

時代は鉄道主流の時代から自動車や飛行機の時代となり、同時にそれまで時間を伝えるアイテムとして人々が頼っていた懐中時計はいつしか時代遅れになってしまいました。当時、人々を魅了したのが機械時計の「正確性」と「デザイン性」です。市場のこのような流れを読んだパテック・フィリップはこの二つを併せ持った時計を作ることにしたのでした。

 

「カラトラバ」の名前はカラトラバ・クロスと呼ばれている十字架のようなモチーフから由来しています。この十字架はカラトラバの騎士たちが1158年のムーアの戦いで要塞を守った時に使われていた由緒正しいものです。パテック・フィリップはこの模様をトレードマークとして1887427日に登録しました。(しかしマークそのものは1960年代以前の作品にも使用されています。)カラトラバから名前を付けたこの時計は登場以来、ブランドのメインストリームの作品に使われています。

パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 

写真:パテック・フィリップ カラトラバ(レファレンス96

 

パテック・フィリップのカラトラバ(レファレンス96)のエレガントな作りはドレスウォッチの原型になったと考えている人がたくさんいます。また、この時計はパテック・フィリップの時計でナンバリングされた最初の時計です。デザインを担当したデヴィッド・ペニーは当時ヨーロッパで生まれた機能的な芸術を求めた「バウハウス」に影響されたデザイナーでした。(バウハウスはドイツに設立された工芸やデザインを含む美術と建築の総合教育を行っていた学校のこと。)彼はそのエッセンスを無駄のない美しい時計のデザインに反映させています。不必要なものをすべて取っ払ったデヴィッドのデザインは当時としては革新的なものでした。そしてその洗練された美しさは1932年に登場して以来、変わることなく愛され続けているのです。

 

ここからさらに深い話をしていく前に、この時計に込められたデザインや理念の理解のためにバウハウスという学校そのものについて触れておこうと思います。

 
パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 イラスト

デヴィッド・ペニーが描いた時計のイラスト

 

機能的な美を求めたバウハウス 

バウハウスは1919年に建築家、ウォルター・グロピウスによって第一次世界大戦後、設立されました。世界情勢の影響で実際運営されたのはわずか14年でしたが、バウハウスは当時としては大変革新的な学校でした。(カラトラバが発表されたのは閉校の一年前)

バウハウスの理念とは人間が生きるあらゆる場面においてデザインが関わり、デザインはその生活の中に溶け込むものである、というものでした。そのため、過度な装飾などは一切なく、機能性と洗練されたシンプルなデザインや数学的美しさを求めていました。そのためバウハウスの生徒たちは何が必要か見極める力、そしてデザインにおいて機能性を損なうことないようにするためのノウハウを教えていました。ここでいうデザインはモノのデザインに限られず、タイポグラフィーも含むようになりました。

 
パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96

写真:パテック・フィリップの腕時計

 

このバウハウスの思想はデヴィッド・ペニーのデザインに多大なる影響を与えました。それはパテック・フィリップのカラトラバ(レファレンス96)を見ても明らかです。

31ミリの丸いケースは無駄な装飾はなく、中に搭載しているムーブメントをすっきりと収めています。厚みは9ミリで平らなベーゼルが特徴的です。ラグは手首に着けた時に見た目的にもすっきりと収まるようなデザインとなっています。着け心地と見た目の良さ、その両方を求めたデザインになっているのです。今ではシンプルな腕時計をみても、特化した何かを感じることは減ってしまいましたが、その土台を作り上げたのがこのパテック・フィリップなのです。

 

そしてこのカラトラバ(レファレンス96)が特徴的である一番の理由はダイヤルのデザインにあります。ミニマリストのデヴィッドらしいモダンな仕上がりになっています。

この洗練されたデザインはバウハウスの理念をそのまま映していると言えるでしょう。デザインにおいて一番大事にしたのは時計の基本的な機能、時間を正確に伝えることでした。

 

オリジナルのデザインでは時間を示すダイヤルは外側に付いていました。そして小さな秒針は6時の場所付近に小さく配置されていました。

 

パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 ムーブメント

写真:パテック・フィリップ カラトラバ(レファレンス96)に搭載された12リーニュのムーブメント

搭載されたムーブメント12リーニュ 

オリジナルのカラトラバ(レファレンス96)に搭載されたのは12リーニュのムーブメントです。このムーブメントはル・コートル製です。この時点ではパテック・フィリップはムーブメントを部品会社から購入していました。しかし経営をスターン兄弟が仕切るようになってからル・コートルのものから自社で開発したものにどんどん変わっていきました。ジャン・フィスターの指揮のもと新たなキャリバーの開発を行いました。

 

 

その他のバリエーション

パテック・フィリップのカラトラバ(レファレンス96)は40年にわたり製造され続けました。その間、いくつかのバリエーション作品も発表されました。ここに記載しているのはすべてではないですが、派生していったバリエーションを見ていくとカラトラバ(レファレンス96)の影響が色濃く残っているのを見て取ることができます。

 

 

インダイレクト・セントラル・セカンド(秒針について)

前述の通り、レファレンス96のオリジナル版はセントラルタイムディスプレイとなっています。つまり秒針は6時のダイヤルの真上の小さな円のなかで別途配置しているのです。セントラルセカンドとは名前の通り、サブダイヤルをなくしているデザインのことを指します。このデザインはヴィクトリン・ピゲとの共同開発の結果出来上がりました。

 パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 インダイレクト・セントラル・セカンド

 

秒針なし

インダイレクト・セントラル・セカンドに加え、秒針すらない作品もいくつか存在しています。これらの場合、外部から調達したムーブメントを使用した時計に多くみられると、人によっては考えているそうです。

 
パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 秒針なし

 

ベレゲ数字

レファレンス96の人気の理由の一つとしてダイヤルのデザインがあります。これはベレゲ数字とよばれているものを使用しています。特に特別なモデルのものについてはエナメルダイヤルがペアになって使用されているそうです。この数字のスタイルはデザイナーであるデヴィッドが推奨したバウハウススタイルを崩すことなく機能を全面に押すことができました。

 

 パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 ベレゲ数字

スチールケース

長年にわたって製造され続けてきたレファレンス96はその時間の経過の中でケースの種類がいくつか登場しました。その中でも特別なのがステンレススチールでできたものです。このカラトラバはありとあらゆるシーンで使える時計であることがポイントでした。そこでどのようなデザインのバンドにも合うよう、ケースがデザインされました。

パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 スチールケース
 

セクターダイヤル

セクターダイヤルとは二重に出材された円でそれぞれ時間と分を表現したダイヤルのことです。時間を表す部分は12等分、分を表す部分は60等分するように時間が刻まれています。

 パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 セクターダイヤル

 

パイロットウォッチ

レファレンス96はパイロット専用の時計として使われることはあまりありませんでした。しかしデザイン面ではパイロットスタイルを意識したものが存在します。この時計では大きいアラビア数字がデザインされています。ブラックのダイヤルの上に数字が蛍光加工されているので、特に読みやすさを強調しています。

パテック・フィリップ:カラトラバ レファレンス96 パイロットスタイル


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妹尾 満隆

妹尾 満隆

合同会社SENOO商事の代表をしております妹尾満隆と申します。

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特にアンティークにおいては

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そこで私は、これまでのお客様との取引の実績、知識、経験、情報を元に正しい情報をウェブを通して発信していくことを会社の方針と掲げました。

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なぜならアンティーク品の場合は情報量の不足から、買い手側が圧倒的に不利な立場にあったからです。

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