ウェッジウッドの魅力的な作品たち(Wedgwood)
目次
〇ウェッジウッドの魅力的な作品たち
ウェッジウッドは長い歴史の中で数々のシリーズ作品を作り上げてきました。
創始者のジョサイアはブラックバサルトやウェッジウッドジャスパーなど多くの代表的な
シリーズを作り、ウェッジウッドの人気を獲得しました。
そのジョサイアの作ったシリーズは他にも多数あり、彼がこの世を去った後にもウェッジウッドの
代表となるようなシリーズが生まれています。
今回はそれらのシリーズや作品を紹介していきます。
〇ウェッジウッドの決定的な白、クリームウェア
ウェッジウッド作品で白い作品と言えば『クリームウェア』がまず挙げられます。
18世紀前半、まだ白い陶器を作るのが難しかった時代に、ジョサイアが生み出した乳白色の陶器
『クリームウェア』は正に西洋陶器の世界に革命を起こした作品でした。
王室からの依頼にもこの『クリームウェア』を使用すると高く評価されて、
『クイーンズウェア』と呼ぶことを許されるという名誉を手に入れます。
ウェッジウッドの名前を世に知らしめることになった作品です。
〇特徴的な模様のカリフラワーウェア
ジョサイアの初期の代表的な作品と言えば先に挙げた『クリームウェア』ですが、
これに並んでもう1つ初期の代表作として名前が挙がるのが『カリフラワーウェア』です。
『カリフラワーウェア』の素地は『クリームウェア』なのですが、
緑色の釉薬で彩色することで、野菜や果物を表現することに成功しています。
こちらはカリフラワーウェアのティーポットになります。
ジョサイアの作品は全体的にシンプルな作りが多いですが、
『カリフラワーウェア』はその中で例外的に、複雑かつ繊細な模様で描かれていて、
かなり特徴的なシリーズになっています。
〇ジョサイアが求めた黒、ブラックバサルト
ジョサイアの作品は非常に数多く、またそれぞれ特徴的な部分が異なっているので、
彼の作品の特徴を一言でまとめるのは難しいです。
しかし彼が特にこだわりを持っていた作品としては、
必ず『ブラックバサルト』が挙げられます。
ジョサイアは黒に対してかなりのこだわりを持っていて、
「黒は純粋であり、永遠である」という言葉も残しています。
『ブラックバサルト』の表面は宝石研磨用の施盤で磨くことができて、
美しい光沢を放つのが特徴的な黒の作品です。
黒が基調の『ポートランドの壺』に一目惚れをして自ら作り上げてしまう点でも、
ジョサイアが黒に対して並々ならぬ想いを寄せていたことがわかります。
〇確固たる人気を持つジャスパー
4年という長い年月をかけて研究して作り上げられた『ジャスパー』は、
その後何百年もウェッジウッドの人気を保ち続けるという多大なる功績を作り上げました。
『ウェッジウッドジャスパー』の特徴的な青色は食器のみならず、簡単な小物、
ハイヒールのかかと、服のボタンなど、これまでの陶器とは全く別の分野でも活躍を見せました。
現在の工場でも『ジャスパー』は作られていて、人気シリーズの1つになっています。
〇18世紀を代表するディナーサービス、フロッグ・サービス
ウェッジウッドは『クイーン・サービス』のように王室や貴族の依頼を受けてから作品を作ることが多々ありました。
『フロッグ・サービス』も1773年にロシア・ロマノフ朝の大帝エカテリーナから
ディナー・サービス、ティーセットを注文されたから生まれた作品です。
蛙の宮殿という愛称で親しまれていたチェスメンスキー宮殿用のディナー・セット、ティーセットだったので、
それにちなんで蛙の図柄を全ての作品に描いています。
944点の作品に様々なイギリスの風景を描いたこのディナー・サービスを、
ジョサイアは他の依頼を一切断って1年以内に完成させてしまいます。
彼はこれらの作品を最大限有効活用すべく、納品する前にロンドンのショールームに展示することにしたのです。
作品としての価値はもちろん、ロシア王室で使われるという点でも話題を呼ぶこととなり、
ウェッジウッドの知名度と人気をさらに高めた作品になったのです。
〇黒や青にも負けない赤や黄
ブラックバサルトの黒、ジャスパーの青とウェッジウッドのカラーを
確立させてきたジョサイアは他の色を使った作品も製作しています。
『フロッグ・サービス』の製作を終えた後、
1776年から中国の赤い器を模した作品を作るようになります。
『ロッソアンティコ』と呼ばれるこのシリーズは赤を基調として、
レンガ色やチョコレート色とこれまでとはまた違った色合いを魅せました。
製作に取り掛かったのは1770年ですが、『ジャスパー』などの研究で先送りされて、
1783年にようやく完成したのが『ケインウェア』です。
こちらも中国の影響を強く受けている作品で、籐(ケイン)をイメージした黄褐色のシリーズになっています。
新古典主義を重要視しているウェッジウッドの作品の中にも、
上記の2つのように中国趣味(シノワズリ)的な作品もありました。
赤や黄色の作品をより生かせる作風を心掛けた結果、
新古典主義に囚われずに中国趣味を取り入れたのだと考えられます。
〇もう1人のジョサイアの作品、ファインボーンチャイナ
1750年にイギリス陶器の最大の特徴とも言える、新しい陶器の製法が生まれました。
それが『ボーンチャイナ』、牛や羊などの家畜の骨を粘土に加える方法です。
英語で陶器はチャイナと言うので、正に骨の陶器というわけです。
まだこの時は完成度が低く注目されませんでしたが、その後ジョサイア・スポードが
1770年に自分の窯(ストーク・オン・トレント)で完成させ、
さらにその息子が精度を高めた『ファインボーンチャイナ』を完成させます。
発祥こそ違いますが、後にウェッジウッドでも作られるようになります。
ウェッジウッドで『ファインボーンチャイナ』が製品化されたのは1812年ですが、
今でも多くの人に愛されている、ウェッジウッドの中心的作品になっています。
『ハンティング・シーン』というボーンチャイナの作品には、
その白さを際立たせる色彩豊かな動物と人の生き生きとした姿が見られます。
(ハンティングシーンはコールポートブランドから引き継いだものです)
ハンティングシーンは元々はコールポートの絵付けでウェッジウッド社が
コールポートを買収した時に引き継いだデザインになります。
豆知識として覚えておくと詳しい方だなぁと思われると思います。
◯継承し、進化する美
『ジャスパー』や『ファインボーンチャイナ』の製法は現代まで受け継がれていて、
その確固たる人気は今も続いています。
ウェッジウッド本社に併設されているビジターセンターでは、過去の作品を見れるだけでなく、
現在の作品が出来上がっていく過程も見ることができます。
そこに所蔵されている過去のデザインやモチーフの数は、
勤務中の職人たちですら把握しきれないほど膨大です。
本社で勤務しているスタッフやデザイナーたちにとってジョサイア時代の優れたデザインは、
心強い味方であると共に常に乗り越えるべき壁でもあるのです。
ジョサイアが自分自身を乗り越えていったように、
彼らもまた進化し続けているからこそ現在のウェッジウッドも人気を博し続けているのです。