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イタリア製ベネチアングラスとチェコ製ボヘミアングラス(ガラス)の違いをお教えします♪

 2016/12/15 ベネチアングラス
この記事は約 10 分で読めます。 552 Views

 ベネチアングラスとボヘミアングラスの違い

今日、ガラスは世界中の国々で作られ、ガラスによる芸術は多岐にわたって発展しています。

その中で、これまで何世紀もの間、特に高級ガラスの生産地として双璧をなしてきた地域があります。

それは、イタリアのベネチア・ムラーノ(英語:Venetian glass)と、

ボヘミア・現チェコ共和国(英語:Bohemian glass)です。

みなさんもご存じの、ベネチアングラスとボヘミアガラスのことです。




どちらも何世紀もの間、その地域の伝統産業として発展してきたガラス工芸です。

この二者は、常に激しい競争を繰り広げています。

全く違った製品を、まったく異なる技術で作っているにも関わらず、です。

 

ですが、この両者の違いをはっきり言える人はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。

そこで今回は、違いがよくわからないという方のために、ベネチアングラスとボヘミアガラスの特徴をわかりやすくご説明したいと思います。

 

ボヘミアングラス

ボヘミアグラス(Bohemian glass)は、16世紀頃、ボヘミア(現在のチェコ共和国西部)で確立されたガラス工芸です。

日本ではそのほか、ボヘミアンガラス、ボヘミアングラスなどと表記されています。

チェコのボヘミア産の木の灰からとれるカリを用いたカリガラスであること、純粋で硬い透明ガラスに彫刻(エングレーヴィング、グラヴィール彫刻)によって装飾を行うことが特徴です。

ボヘミアングラスの器 (bohemian glass)

 

ボヘミアガラスの特徴

ボヘミアングラスのボヘミアの風景を描いたゴブレット型の花瓶

※ボヘミアの風景を描いたゴブレット型の花瓶

 

 

そのカットの技術はオリジナルなデザイン、モチーフの豊富さ、人目を惹く装飾が、ボヘミアガラスを世界を牽引するガラスに仕立て上げました。

ボヘミアガラスのアンティーク品はほとんど古典的な花瓶の形です。
手仕事で作られており、時には渦巻になっていたり、貝殻や、花、木の幹のような有機的な形をしているものもあります。

装飾された花瓶、コップ、水差しは代表的な形で、多くは当時の焼成や調整技術による玉虫色の輝きを持っています。

◇ボヘミアングラスの歴史◇

ボヘミアングラスとは、「ボヘミアンクリスタル(ボヘミアの水晶)」と言われることも多い、現在はチェコ共和国の一部であるボヘミアやシレジア(シュレジエン)という地域で13世紀から生産されてきたガラスです。

 

高品質で、職人の熟練の技が際立ち、綺麗で革新的なデザイン性が、世界的に長年の歴史の中で認知されています。

 

ボヘミアングラスのワイングラス

チェコのボヘミアでは、その緑豊かな自然環境から、ガラスの原料となる珪石やるつぼ用の耐火粘土、窯の燃料に使う木々に恵まれていました。こうして、15世紀頃からガラスの生産が本格的に始まりました。

 

初めはベネチアなど、外国の様式を用いたガラス生産が行われていました。

ボヘミアのガラス職人は、すでにガラス製造の中心であったベネチアで修業を積んでいた者も多かったのです。

 

その職人たちの修行によってだんだんとガラスの品質をあげボヘミアングラスの知名度は

ルネサンス時代にその美しく色鮮やかなガラスで有名となりました。

 

ボヘミアングラスの歴史は、地方で発見された豊富な天然資源と共に始まりました。

ボヘミアングラスの職人たちは、カリが石灰と結合すると透明で色の無いガラスになり、イタリアから来たガラスよりも丈夫であることを発見しました。

16世紀には、ボヘミアの水晶という言葉はその他の地域で生産されたガラスよりも品質が良いことを示すものとして、長い歴史の中で広まっていきました。

よく他のガラスにあったような、鉛が混ざっているということはありませんでしたし、輪で切ることができました。

加えて、かまどの木や灰になったものまで、カリの原料として使うことができました。
さらに石灰岩やシリカもその地方には大量にありました。

17世紀に転機がおとずれます。

 

プラハの宝石彫刻家カスパル・レーマン(Caspar Lehmann)が、宝石をカットするエングレーヴィング技術をガラス細工に応用してはどうかと提案したのです。

 

 

これにより、ベネチアングラスのエナメル彩などのようにガラス表面に模様を描く技法に代わり、ガラスに直接、模様を彫り込むようになったのです。

 

※その後キャスパー・レーマンは学校を創設しましたが、かの有名なニュルンベルク彫刻学校の創設者である、ジョージ・シュワンハードといった子弟たちは、ボヘミアから国外へ移住していきました。

 

ボヘミアングラスのコンポート

この技術は普及し、バロック調の装飾がほどこされた美しいボヘミアガラスは、ヨーロッパじゅうの宮廷でもてはやされるようになりました。特に、ウィーンのハプスブルク家が愛用していたことは有名です。

 

また、17世紀後半には、ガラス原料のひとつであるソーダ灰の輸入が安定しないことから、ボヘミアに近いシレジアの木材で作った木灰を用いることにしました。

その灰からとれる良質なカリ分をガラスの原料に混ぜることにより、それまでのソーダガラスよりも、エングレーヴィングに適した、硬いカリガラスが誕生したのです。

カリガラスの品質が安定すると、ボヘミアガラスは、ベネチアングラスに匹敵する世界的ガラス工芸の地位を確立していきました。

ボヘミアングラスの花瓶

ボヘミアングラスの人気は、18~19世紀にヨーロッパを席捲した、宝石の模造によっても高まりました。

 

ガラスは宝石よりもお手頃なのにもかかわらず、すばらしいジュエリーに見えるため、ガラスに宝石と同じようなカットを施したのです。

その結果チェコの地は装飾を施されたガラス製品の主要な産地となり、そこでのガラス生産は1685年から1750年にかけて、最盛期のバロック式芸術として世界的な評価を得ました。

 

 

その頃のヨーロッパでは、かつては王侯貴族だけのものだった宝飾品を、一般市民の富裕層がまねするようになっており

ボヘミアングラスは宝石と同等の評価を得、裕福な人々や貴族に求められました。

 

ボヘミアングラスのエングレーヴィング技術は、もとは宝石に使われていた技術だったのですから、本物の宝石のように美しいガラスジュエリーができたことでしょうね。

 

ボヘミアングラスでできたシャンデリアはフランスのルイ15世、オーストリアの帝国のマリア・テレジア、ロシアのエリザベス女王の王宮にも飾られました。

シレジアは、フレデリック・ウィンターやその他の彫刻家によって、そのようなガラス製品の主要な産地となりました。

18世紀後半には、イギリスがロココ式スタイルによってボヘミアガラスよりも有名になりましたが、ボヘミアガラスは玉滴石という、中国に影響を受けた金のデザインと黒のスタイルによってその競争に応じました。

 

ガラスビーズ工房もたくさんできました。

ビーズは、今でもボヘミア地域で作られる主要工芸品です。

ボヘミアンビーズ製造技術では、とかしたガラスを型に押し込み、何千もの同一品を作り出すことができます。

 

 

芸術的価値が落ちた時期もありましたが、19世紀にはルドウィグ・ロブメイヤーというウィーンの資本家が、ガラスデザイン工房を設立したとにより復活をとげました。

 

ボヘミアングラスの技法

ボヘミアングラスの1900年に作られた水差し

※1900年に作られた水差し

ボヘミアガラスが特に特徴的なのはその切り出しと彫刻です。

カリガラスは、硬くて形状加工が難しいため、ベネチアングラスとは違ってまずは形を成型し、ガラスの温度が下がってから表面を彫刻などで加工します。

これをコールドワークといいます。

そして、硬いガラスの表面に、小さな銅製の回転盤をあてて模様を彫り込んでいく技法がエングレーヴィングです。

天然の水晶のように硬く、厚みのあるガラスの表面一面に、カット技法では出せない繊細な表現で模様がつけられていくのです。

 

手で切り出しや彫刻をほどこされ、空気を中に吹いて膨らませ、絵付けが施されたガラス製品はシャンパングラスからシャンデリア、飾り、小さな像まで様々で、チェコの主要な輸出品目として知られている他、土産物として観光客にも絶大な人気を誇ります。

チェコ共和国にはガラス工房が無数にあり、地元の人だけでなく国外からも学びに来る人もいます。

エングレーヴィング技法を使ったボヘミアングラスのカップ&ソーサー bohemian glass cup

 



ベネチアングラス

ベネチアングラス(ヴェネチアングラス/Venetian glass, Murano glass)は、イタリア・ベネチアのムラーノ島で作られるガラス工芸品です。1000年以上の歴史があります。

ベネチアのラグーンに浮かぶ小さなムラーノ島は、14世紀以降、ガラス製作において世界的中心でした。

吹きガラス製法の独特な造形美、また、色彩のあざやかさで有名なベネチアングラス。

鉛を含まないソーダ灰を用いたソーダガラスであることも特徴のひとつです。

すべて手作業で作られるため、世界でひとつしかない製品ができあがります。

ビーズであっても、ひとつひとつ手作業で作られます。

ベネチアングラスのスワンステムのコンポート venetian glass

◇ベネチアングラスの特徴◇

熱せられたガラスの玉を吹くことで、職人が様々な形を生み出します。

このような製法は、さきほどのコールドワークとは逆に、ホットワークと呼ばれます。

熱いガラスを細かく加工して、花や鳥など複雑なモチーフを成型するなど、高度な技術が用いられます。



ベネチアンガラスは、その色のあざやかさでもよく知られています。

彩色は、様々な鉱物を使って行われます。

鉱物は、細かく挽き、混ぜ、それからガラスと一緒にとかします。

この工程によって、様々な色のガラスが生まれるのです。

 

また、ムラーノのガラス職人たちは、様々な新技術を発展させてきました。

その技術とは、クリスタッロ(水晶のように無色透明なガラス)、エナメル彩、アヴェンチュリーナ(メタリック調の輝きをもつガラス)、ミルフィオリ(ガラスモザイク)、ラッティモ(乳白色のガラス)、フィリグラーナ(レース模様)などで、今日でも使われています。

ベネチアングラスのハンカチーフの花瓶 venetian glass

◇ベネチアングラスの歴史◇

 

13世紀頃のベネチアは、東方諸国とヨーロッパの国々を結ぶ東西貿易の中心地として栄えていました。

その中で、中東の国々で作られていたガラス工芸品に着目し、自国で生産するようになったのが、高度な技術を要するベネチアングラスのはじまりです。

 

ガラス工芸の盛んだった東方地域から原材料や職人を融通してもらい、独自のガラス工芸を発展させていきました。

 

ですが、原材料も燃料も自国でまかなうことのできないベネチアは、せっかく発展してきた技術を、原材料の産出国などにとられてしまうことを恐れました。

そこで、ベネチアングラス工芸を、政府の厳重な管理の下で保護することにしました。

ガラス職人をすべて小さなムラーノ島に強制移住させ、島から出られないようにしたのです。

こうして、ベネチアングラス職人の技術は秘中の秘としたのです。

 

そこまでして大事にしたおかげで、ガラス製造の独占状態を何世紀もの間、守り続けることができました。

また、様々な高度な技術も生まれ、ヨーロッパの中でも傑出した産業に発展していったのでした。

 

こうして、ムラーノ島は何世紀にもわたって、グラスやシャンデリア、

鏡などガラス製品の輸出貿易の拠点であり続けていたのでした 。

ベネチアングラスのペーパーウェイト venetian paperweight

 

 

どちらも似たようなものだと思ってはいませんでしたか?

このように、材料も作り方もまったく異なる工芸品だったのですね。

どちらが優れている、というものではありません。

 

何世紀にもわたって発展し続け、世界中で愛されてきたすばらしい技術の結晶です。

それぞれの良さを楽しんでいただければと思います。

 


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