ロレックス デイトジャストの歴史
ロレックスの哲学
ロレックスデイジャストはロレックスの誇るコレクションのなかでも間違いなくブランドを象徴する時計です。
人によっては、ダイバーズウォッチのサブマリーナこそ象徴の座にふさわしいとするかもしれません。もちろん、サブマリーナも歴史的価値の高い時計であることは間違いありません。
しかし、ジャストはそれ以上の歴史的価値があります。それは、デイジャストこそがロレックスのエッセンスを兼ね備えているからです。
シンプルさ、信頼性、丈夫さ、丁寧な作り、そして、万人の記憶に残るデザインです。
ロレックスは数々の技術革新に果敢に取り組んできたパイオニアです。
1945年、ロレックスが40周年を迎えた際に発表したのが、オイスター・パーぺチュアル・デイトジャストでした。
可能な限りシンプルを目指し、素早く日付を切り替える機能は腕時計の歴史の中を振り返っても大きな功績でした。
時針、分針、秒針、それ以上何も要らない。
この考えは何十年にもわたり、ロレックスの哲学となっていたのです。
懐中時計であろうと、腕時計であろうと、ロレックスが世に送り出してきたのは3針の時計です。
もちろん、クロノグラフや手の込んだカレンダー機能付きの時計といった例外はあります。
しかしながら、1945年、ロレックスは日付表示と素早い日付切り替え機能を搭載した腕時計を初めて世に送り出したのです。
ロレックスの生い立ち
世界で一番有名な時計メーカーと言っても過言でないロレックス。
その歴史は、ドイツ・バイエルン州にあるクルムバッハに始まります。
1881年、ロレックスの創始者ハンス・ウイルスドルフが生まれた地でもあります。24歳の時、ウイルスドルフはイギリスに渡ります。ドイツで見習いを経験し、スイスの時計産業に従事した直後のことでした。当時、時計ブランドのほとんどが懐中時計を生産しているなかで、ウイルスドルフは何か思うところがあり、早いうちに腕時計に針路を求め始めたのです。
ロレックスの前身
ロンドンで2年を過ごし、ウイルスドルフは腕時計の時代が来ることを強く確信していました。義兄であるアルフレド・デイビスと共に、ウイルスドルフ&デイビス社を興し、二人で協業してビジネスを行っていました。
デイビスは製造、ウイルスドルフはムーブメントの買い付けをしていたのです。
ウイルスドルフとデイビス社の当時のメインビジネスはジャン・エグラーのムーブメントをイギリスに輸入し、デニソンなどの高級ケースにムーブメントを入れて販売していたのです。
ブランドの誕生
しかしながら、この新しい時計を商品化し、世界的に認知してもらうためにはそれにふさわしい名前が必要でした。
1908年、ウイルスドルフがロレックスという名前を思いついたのですが、これがロレックス伝説の始まりとなったのです。
因みに、この名前はウイルスドルフのインスピレーションによる全くの思いつきだったので、名前の由来などはありません。
1913年、ロレックスはビーラー・エグラー社のムーブメントのイギリスの独占販売権を獲得しました。この会社はその後ロレックスに合併吸収されたため、1930年以降にこの会社の名前を聞くことはなくなます。
第一次世界大戦の折、ウイルスドルフは会社をスイス・ビールに移し、1920年1月17日にモントレ・ロレックス社が正式に登記されたのです。
ロレックス社の特徴は今も昔もその正確さにあります。それは、1910年のクロノメーターのテストまでさかのぼります。ロレックス社の時計のほとんどはCOSC(スイス公認クロノメーター検査局)認定のクロノメーターなのです。
時代を選ばないスタイル
ロレックスが初となった技術革新の一つは、世界中に衝撃を与えた、防水ケースであるオイスターで、その名の通り、オイスター(牡蠣)のようにしっかりと閉じられたケースです。
このネーミングとコンセプトは特殊なノッチのついた裏蓋と共に未だに健在です。
このケースを開けるのには特別な道具が必要になります。1931年、ロレックスは自動巻きムーブメントを搭載したオイスターパーペチュアルを発表しました。
そして、ハンス・ウィズドルフは新しく、シンプルかつ重要な機能をその中に統合したのです。それが日付表示でした。
この時生まれたのが、ロレックスデイジャスト Ref4467です。このエディションは現行のエディションと比べても近しいものを感じます。三針でゴールドカラー、3時の位置には日付が表示され、真夜中を過ぎると日付が自動的に切り替わるのです。
ギアとスプリングを使った機構を使うことにより、日付の文字盤が真夜中なると瞬時に動かすことができたのです。つまり、日付をいつでも正確に表示できたのです。
初期においては、ロレックス・デイトジャストの特徴的な要素の一つはまだ不在でした。
その特徴とは、日付表示の拡大レンズであるサイロップレンズです。
1954年、発表から9年経ってから、ロレックスはサイロップレンズを導入したのです。
また、初期ではイエロー・ゴールドのカラーのみでした。その後、ロレックスはローズ・ゴールドとスチール、もしくはそれらのツートンを用意したのです。ベゼルも当初は少し違いました。フルーテッドデザインではなく、コインスタイルのベゼルだったのです。
デイトジャストの成功
この時計が成功したのは当然のことでした。
自動巻き、正確性、日付表示を以てしてオイスターデイトジャストは高級で実用的な時計としての位置づけを築いたのです。
高い防水性の秘密はスクリュー留めされた裏蓋にありました。これは、ローターの型をなぞったその丸い形状が泡のようであったことから、バブルバックと呼ばれました。
また、デイジャストでは新たにジュビリーブレスが導入されましたが、これは、今もロレックスのコレクションで採用されているゴールドのブレスレットのことです。
1945年、デイトジャストはキャリバー710を使用していました。
その後、キャリバー730に変わり、17のジュエリーが散りばめられました。
しかし、これらのムーブメントは信頼性もあり丈夫なのですが、修理が非常に難しいのです。そもそも、部品が手に入らないのです。
ロレックスでさえ、もはや、この歴史的なモデルたちの修理ができなくなっています。
そして、こうしたモデルは非常に高値で取引されています。オークションでは、平均でも10,000ユーロ(=約130万円)で取引されているようです。
着実に進化を重ねるデイトジャスト
1957年、デイトジャストのデザインが変更になりました。
新たにキャリバー1065を採用した影響で、裏面がフラットになり、サイロップレンズも付きました、1950年当時の感覚では価格も驚きの価格でした、ツートンのジュビリーブレスタイプで360ドルだったのです。
1965年、キャリバーがまた変更になります。あの、有名なキャリバー1570が導入されたのです。
1972年から、このクロノメーターが刻む時間はハック機能によりしっかりと調整がされるようになったのです。
2年後にはロレックスはサファイヤクリスタルを導入します。
1962年、Centre Electronique Horloger(CEH)の会員であった時計会社16社により、初めてのクォーツキャリバーが共同で開発されました。Beta21の登場です。
他者と一線を画したいロレックスはこれのは参加せず、独自のラボでクォーツを開発し、オイスタークォーツが誕生したのです。
ロレックス。デイトジャスト・オイスタークォーツ Ref 17000は1977年のカタログに掲載されていますが、自社製クォーツムーブメントを搭載したこのモデルはあまり成功とはいえませんでした。
しかし、このモデルは現在ある意味成功を収めています。コンディションによりけりですが、ブレスレットが時代遅れを感じさせるにも関わらず、2,500~10,000ユーロ(=33万~130万円)で取引されているのです。
オイスター・パーペチュア・デイトジャストのスチール、もしくは、ホワイトゴールドベゼルとジュベリーブレスのスチール、オイスターブレスレットは値崩れしていません。
1970年代、1980年代の腕時計は中古で、2,000ユーロ(=26万円)以下です。
中古に関して、気を付けなくてはならないのは突起の厚みです。
傷を修復するのに過度に磨いたため、すり減っていることがありますが、これは不具合とみなされ、価格が下がります。
最近のエディションではちゃんとした補修部品が出ています。しかし、針、ダイヤル、ブレスレットがアフターセールス品である可能性もあり、その場合も価格は下がります。
その他に気を付ける点としてはブレスレットの状態です。特に、ジュベリーブレスでは伸びていることがあるのです。交換は非常に高価ですが、修理は可能です。レザーストラップもデイジャストには似合うでしょう。
高価なゴールドエディションのデイジャストはあまり人気ではありまえん。
中古品だと相場は3,000~10,000ユーロ(=39万円~130万円)で取引されますが、もちろん、時計とブレスレットの状態が値段には大きくかかわります。
また、アフターマーケットでジェムセッティングを施されたものにも注意が必要です。ロレックスではそのような時計の修理は請け負ってくれません。
ロレックスの普遍性
デイトジャストは、他のロレックスのモデル同様、高い認知度を誇っています。
ケースの形は時を経て男性的になりましたが、その他の要素(文字盤のレイアウト、針、サイロップレンズ、スペック)は基本的に昔のままです。
さらには、特徴的なジュベリーやオイスターブレスレットのおかげでデザインに時に左右されない普遍性が生まれています。
スペシャルエディションもほとんどありません。1980年代にムーンフェーズ付きのものと、回転ベゼルの付いたロレックスデイトジャストサンダーバーバードくらいです。
2000年代初め、ロレックスはフルーテッドデザインに変わってフラットでポリッシュ仕上げのベゼルを採用しました。サイズも変わっていません。
デイジャストIIが発売されるまで何十年も同じサイズを通していました。市場で大盤の腕時計の需要が高まってきたのをうけ、36ミリから41ミリへとサイズを大きくしたのです。
しかし、この2代目デイジャストもオリジナルのデイジャストのデザインを踏襲して、エレガントさを保っているのです。
ムーブメントも大幅に改良されましたが、刷新されたとまでにはなりませんでした。
ブルー パラクロム・ヘアスプリングを備えたキャリバー3135を引っ提げて、デイトジャストは21世紀の到来を迎えています。
2014年ロレックスはデイトジャストに文字盤のカラーが異なる3つのエディションを投入しました。
しかし、これらのエディションを見ても、やはり、ロレックスが時代を選ばない、永遠の魂を宿している時計であることがよく分かります。
毎日確実に時を刻み、非常に正確で、どんな装いにも合う、そんな唯一無二の時計をロレックスは改善の積み重ねて作りあげたのです。