フランスの広告用アンティークキーホルダー ブルボンキーホルダーの魅力
目次
フランス製 アンティークブルボンキーホルダーの魅力
○ブルボン社のキーホルダー
ブルボンと言われれば、ほとんどの人はお菓子メーカーを思い浮かべるでしょう。ただここではそのブルボンではなく、広告用のキーホルダーを制作していたブルボン社のことを指します。
このキーホルダーはフランスで1960年代に製作され、完全なる広告用として無料で配布されていていました。
無料にも関わらずそのキーホルダーの完成度が非常に高いので、フランスの国民に親しまれることになりました。
広告の形がテレビやネットなどの媒体に変化していったこともあり、ブルボン社のキーホルダーは現在は作られていません。それ故に希少性が高まり、世界中のコレクターが蒐集に力を入れています。今回はそんなブルボン社のキーホルダーの魅力に迫っていきたいと思います。
○ブルボンキーホルダーの魅力は1つじゃない
ブルボン社のキーホルダーを見たことも触ったこともない方もいるかもしれないので、まずは形からご紹介します。
台形のキーリングが付いた無色透明で丸い心地よい肌触りのプラスチックの中に、広告用の仕掛けが凝縮されています。
このプラスチックの部分が当時はまだまだ難しい技術で、他の企業もブルボン社に倣ってキーホルダーを作ったのですが、クオリティが数段劣るということでブルボンほどの注目を集めることはありませんでした。
プラスチック部分の透明度は40年以上経った今でも全く衰えていません。最近作られたのではないかと疑うほどのレベルです。
素材の部分のクオリティで既に他社と大きな差をつけていましたが、さらにデザインの部分でもフランス人の国民性にマッチしていました。
単純に企業のマークや名前を載せるだけではなく、職人が手間暇かけてデザインを描き、見て楽しめる工夫を凝らしていました。
プラスチックの中に傾けると動く小物を入れ、その動きによってデザインをより楽しめるものへと進化させました。
また表面と裏面と2つのデザインに関連性を持たせることで、たった2コマしかないにも関わらず物語を生み出すことにも成功しています。
何と言ってもこれだけの手間をかけているのにも関わらず、無料で配られていた点がブルボン社のキーホルダーの驚くべき点です。それ故に世界一贅沢なオマケと称されています。
ポケットに入る、手のひらにいくつも乗せられる、そんな小さな姿をしているのに、そんな小さな姿だからこそ、多くの人に愛されているブルボンキーホルダーは様々な場面で活躍しています。
○1968年のフランスと言えば?
1968年の冬季オリンピックはフランスのグルノーブルでで開催されました。ブルボン社のキーホルダーはこの国を挙げてのお祭りにも当然参加していました。
『グルノーブルのお土産』と名付けられているキーホルダーは、他のキーホルダーとは少し趣向が変わって長方形になっています。青と白で表現された雪山をスキーヤーが縦横無尽に滑ります。
左右に動く仕掛けなのでスキーヤーが非常に生き生きと雪山を滑っています。
このスキーヤーのウェアを赤色にすることで、デザインを損ねることなく、フランス国旗のトリコロールも同時に表現しています。ブルボンキーホルダーのこだわりがしっかりと映し出されている作品になっています。
裏面にはしっかりとグルノーブルオリンピックの作品であることが記述されています。表面では芸術性を高めつつ裏面にはシンプルに情報をまとめておく、広告としての形を崩さずに楽しめる作品に仕上がっています。
企業用の広告以外にもキーホルダーを制作していて、その幅はオリンピックにも及びました。もちろんフランスの観光地にもスポットを当てています。
○パリの凱旋門にエッフェル塔
フランスと言えば、と問われれば思い浮かべる姿は人それぞれだとは思いますが、代表的な観光地が少なからずあります。パリの中心にどっしりと腰を下ろした凱旋門は、ブルボンの小さな姿の中にもその雄々しさを見せてくれています。
またエッフェル塔では塔の手前にセーヌ川とイエナ橋を描き、その橋の下をフェリーがくぐる仕掛けになっていて、さながらクルーズの旅をしている気分にさせてくれます。
フランスの主要な観光地もブルボンのキーホルダーで表現されていますが、こういった観光地や都市の広告では乗り物を描くことが主流になっています。バスやフェリーなどの公共の乗り物が左右に動くことで、その観光地に自分が旅行で出かけている気分にさせてくれます。
一般的な車ではなくバスを描くことが多いのは、そういった狙いがあったからかもしれません。
○ブルボンキーホルダーコレクターは世界に多い
フランスで作られたこのキーホルダーは万を超える種類があるとも言われていますが、実はコレクターはフランスよりもそれ以外の国の人に多いのです。実際にフランスに訪れても、ブルボンのキーホルダーを集めるのは難しいのです。
もちろん全くないわけではありません。
クリニャンクールの一角に世界的に有名なキーホルダー専門店があります。
『Les porte-cles』ではブースの壁一面にびっしりとキーホルダーをディスプレイしていて、コレクターならその宝の山に飛びつきたくなる衝動に駆られることでしょう。店主のシャピュイさんが集めた珠玉のキーホルダーたちの保存状態を見れば、シャピュイさんがどれだけキーホルダーに愛情を注いでいるかがわかります。
ネットからでも注文ができるので、多くのコレクターの人に利用されています。
○フランスの小さな教科書
企業用の広告のみならず、オリンピックや月面着陸、さらにフランスの観光地の広告にもブルボンのキーホルダーは使われていました。このキーホルダーには様々な顔があり、単純な広告としての面だけでなく、現在は当時のフランスの歴史的な背景を見ることができるようになっているのです。
緑生い茂る草と白黒の牛が描かれているのは『セ・エフ・ア』という窒素肥料を用いていた生産組合のキーホルダーです。
裏側には赤地に白文字で『1フラン分の窒素肥料で10リットルの牛乳に、2キロの肉を摂ることができます』と書かれています。今でこそ考えられませんが、当時は化学肥料に夢を見ていたということがわかるようになっています。
表の草の所には『窒素あり』と書かれた看板が立っているのです。
他にもデザインがクラシックな物からモダンな物へと変化していった過程も学べますし、お酒に対するイメージを必要以上に良くしている、規制がかかる前の歴史を感じさせてくれる作品がいくつもあります。
ブルボンのキーホルダーがフランスを越えて世界中のコレクターを魅了しているのは、このように1つ1つが全く違う顔を見せるという独自性が強いからなのです。