イギリスの高級陶磁器 ロイヤルウースター(royal worcester) 受け継いだゴールドのカップで味わうコーヒー
1751年にイギリスのウースターで創業されたロイヤルウースターは、イギリスで最も古い窯元です。
ロイヤルウースターは元はウースターというブランド名でした。
長い歴史の中で、1789 年にウースターはロイヤル(王室御用達)の称号を獲得。
ロイヤルの称号を得たことで今のロイヤルウースターとなりました。
現在でもエリザベス女王 2 世の任命を受けて陶磁器を作り続けています。
受け継がれ続ける伝統と格式は今も変わることなく不変です。
思い出と共に輝くロイヤルウースター
一般的に高級と言われるものを持つということは、たんなる贅沢のようにも思われますが、
時に贅沢な品がそのものだけの価値だけに留まらず、それにまつわる思い出という付加価値がつくことがあります。
とても華々しい歴史を持つロイヤルウースターのカップ&ソーサーが今、手元にあります。
クリストフルのスプーンとともに揃えられたセットは、全体がゴールドで彩色されているひと目で豪華とわかるものです。
たった1客のこのカップ&ソーサーとそしてスプーンは、思い出のつまった大切な品です。
光が反射する度にその存在感を輝かせるゴールドのカップ&ソーサーは、スプーンと共に祖母から受け継いだセットです。譲り受けた時はまだこのカップ&ソーサーにも興味はほとんどなくしまいこんでいたままでした。
ふと思い出して取り出したのはつい最近のことです。
祖母の行き届いた手入れのままでしまいこんでいたカップは、思い出の中と同じ色で輝いていて、とても大切にされていたことがよくわかります。単純に高級だったから祖母が大切にしただけではないような気がします。
祖母から聞いたロイヤルウースターの名前が頭をよぎり、
カップとソーサーを裏返してみると確かにロイヤルウースターの刻印が刻まれていました。
刻まれた刻印が歴史の深さを伝えてくれています。
優しかった祖母の温かさがカップを包み込んだ手に蘇り、午後のひと時をこのカップで過ごそうと思いつきました。
ロイヤルウースターと午後のひと時を過ごす
今日は挽き目を細くしたコーヒー豆を用意してみました。
食後でもある午後の昼下がりに、今日は濃いめのコーヒーが飲みたい気分です。
コーヒー豆も普段は10gのところをいつもより量を5g多くいれドリップの準備をします。
たった5gのコーヒー豆の量が、味の濃さを左右します。
コーヒー豆をフィルターにセットしたらお湯を真ん中に注ぐと、豆の真ん中がふんわりとお湯を含んで膨らみました。
隣に準備してあるゴールドのカップ&ソーサーが待ち遠しそうにしているようにみえます。
ほんの数十秒の蒸らしの時間、手持ち無沙汰がじれったく感じクリストフルのスプーンを持ち上げスプーンの柄をクルクルと回してみると、光を反射してキラキラと光りました。
スプーンの柄には細かい装飾が施されていて、キラキラと輝き丁寧なデザインが細い柄を額縁のように飾っています。
家で使っているなんの装飾もないスプーンとは、見た目も持った感触もまったく違って驚かされます。シルバーの感触は実際に手にしてみないと確かにわからないものなのかもしれません。
職人の巧妙な技がつまったスプーンに気を取られているうちにうっかりと蒸らしの時間が過ぎてしまいました。
お湯をゆっくりと円を描くようにドリッパーに注いでコーヒーを淹れます。いつもより多めに入れたコーヒー豆から濃く深い匂いが漂ってきます。
鼻の奥に届く香りはいつもよりきつく頭がスッキリとしてきました。
1滴1滴と抽出されたコーヒーの色も香りと同じように色濃く気持ちを静めてくれます。色濃いコーヒーはきっとゴールドのカップに映えるだろうなぁと考えながら過ごすこの時間はゆったりとして、幼い頃、祖母が同じように過ごしてきた時間を思い出しました。
淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ前にもう一度カップを手にしてみます。
ロイヤルウースターのゴールドはけして嫌味な感じをさせず、上品で気品すら感じさせる涼やかなゴールドです。
覗き込んだ自分の顔がカップの曲線に丸く映り込むので、右に左に、上に下にとカップを動かしてみせると幼い頃、祖母の手から借りた時にも同じようにカップを覗き込んでいた記憶が蘇りました。
せっかく淹れたコーヒーが冷めてしまわないように、カップに先にお湯をいれてあたためておきます。本当なら、こんな時間も惜しいほど待ち遠しいのですが、焦りは禁物です。
透明のお湯がカップの内側の白い陶器を温めている間に、クリストフルのスプーンを乗せてあるソーサーを手にするとカップと同じように自分の顔が映りこみました。
ゴールドの受け皿はやはりカップやスプーンと同じように動かす度に光を反射して、つい夢中になってしまいそうです。
ほどよくカップが温まっているのを確認したら お湯を捨てていよいよコーヒーを注ぎます。
濃い色のコーヒーが吸い込まれるように白い陶器に流し込まれるとコーヒーはまるで金縁で飾られた丸い額縁におさまったようにみえました。
コーヒーが体温と同じくらいの温度になると濃いコーヒーでも苦味が少し柔らかくなって、甘みが強く感じられます。
ドリップの仕方、カップの扱いなど簡単だけれど1つ1つの動作を大切することでいつもと違ったひと時が確保できます。特別な思い入れのあるセットを使うなら尚更です。
ロイヤルウースターのカップをソーサーの上に乗せ、クリストフルのスプーンを添えたらやっと待ちに待ったコーヒータイムです。
器と一緒に思い出も受け継ぐ
飲みごろのコーヒーは香りを部屋中にふりまき、揺れるコーヒーがゴールドのふちで遊んでいるようです。クリストフルのシルバースプーンでくるくるとコーヒーを回すとなめらかな渦がカップの中で浮かび上がりました。
祖母が大切にしてきた午後のほんのわずかなひと時が、実はこんなに優雅で気持ちを落ち着かせてくれるものだと初めて実感することができた気がしました。
唇にふれるカップの淵がなめらかにコーヒーを口へと流し込んでくれます。濃いめのコーヒーは、スッキリとした味わいを残しながらもなぜか心の奥を温かくさせてくれました。
濃いコーヒーに適したほどよい大きさのカップは持ち手もしっくりと手になじみます。
ロイヤルウースターやクリストフルは、大切にすれば次の世代へと受け継がせるだけの価値があります。他に持っているカップなどでは到底こんな風に、何年も、何十年も残しておくことはできません。
祖母が残してくれたことに感謝をしながらコーヒーを飲むといつもよりおいしく、そしてほろ苦くも感じました。
器というのは、使っていた人の思い出と一緒にあり続けます。特に大切にしていたものなら尚更です。受け継がせたいと思えるだけの価値があるものは、最初から大切にされるので、いつまでもきれいに残されていきます。
器が高級なだけではなく、使った人、そして受け継いだ人の思いが宿るロイヤルウースターとクリストフルはもしかするとまたさらに次の世代へと受け継がれるかもしれません。そう思うと今、持っている器にもさらに愛着がふつふつと湧き、思い入れも深るなるでしょう。
それも古くはロイヤルウースターの職人たちが磨き上げた技術のなせる技です。
大切なものは常に身近なものに宿っているものです。思い出を輝かせる優雅なひと時を味あわせてくれるロイヤルウースターとクリストフルは自分へのご褒美と言えるでしょう。