ルネ・ラリック(Rene Lalique)のロストワックス作品紹介から偽物、本物判定の仕方まで!
目次
ルネ・ラリックのロストワックス作品①
ロストワックス製法で作られたルネ・ラリック花瓶はめったに市場にでない、レアものです。
今回はその中の一つを紹介したいと思います!
下の写真のすがすがしい花瓶ははルネ・ラリックが作った、“Branches De Mures Formant Deux Anses”
と呼ばれるものです。
近代の記録にのこっていないもので、おそらく当初買われたとき以来市場に出されなかったものだそうです。
カタログレゾネには絵のみが掲載されていたそうです (レアもの!)
型番号は193, 製造されたのは1920年されたものでロストワックス製法で作られたものです。
ちなみに、ロストワックス製法とはワックス(ロウ)で作品の型をつくり、そこに金属などを流しこんで作成する方法です。
ワックスは削りやすいため型が作りやすいなんだとか
大きさは高さ15.875 cm、太さは太いところで10.16 cmとお手頃サイズ!
何よりも特徴はきれいなブラックベリーのモチーフですよね (・∀・)
家にお花を入れて飾っておけば、農園の雰囲気を味わえる気がします (*^_^*)
ルネ・ラリックのロストワックス作品②
少し歴史の話を(^^)
イギリスにはニューカッスル・アポン・タインというところがあります。
タイン川の近くにあるこの年は、1080年代からあり、その歴史は長いそうです
16世紀には石炭の産地として栄えていましたが、17世紀前半には疫病によって人口の1/3がなくなったとか
しかし17世紀後半になると印刷業で経済は復活し、またフリントガラスの産地ともなりました
現在に近い話では、1904年に今でも続く有名なアート・ギャラリーが開かれました。
今回紹介する作品はこんな場所が舞台となります。
この都市で見つかったルネ・ラリックの作品は、高さ16㎝のロストワックス制の花瓶でした
その名も、 “Rene Lalique Vase Deux Figures Femmes Ailees”
なくなった方の遺産から見つかったんだとか
1922年に製造され、腕を広げた色っぽい天使で飾り付けされています
ロストワックス製法で作られた作品は、一回作成するごとに型が壊されてしまうため、 通常一種類につき一つしかありません
しかし、型を復元することによって、同じでなくてもとても似ている花瓶を作ることができます
今回紹介している花瓶にはそのように作られたコピーが4体のうち、1つめで、発見されたときには大騒ぎになったそうです w(゚o゚)w
(花瓶の下には1/4の文字が刻まれていたことから判明しました)
ルネ・ラックスのサインもあり、珍しく高品質の状態で見つかっています 。
でも、この花瓶の一番の特徴は飾りつけとなっている二人の女性ですよね(#^_^#)
花瓶が作成された時代に裸体の女性をモチーフにするのが流行りだったそうですが、
なぜかロストワックス製法で作られたものにこういうデザインは珍しいそうです。
そんな飾りつけのせいか、なんか神秘的なオーラを感じますよね (⌒v⌒)
ルネ・ラリックのロストワックス作品③
三つめの作品も少し神秘的なオーラを持つものです
でも正直なところ、この作品はルネ・ラリックっぽいてだけで、
本当に彼の作品か確証がないんです。。。(゚O゚;)
この花瓶にサインはなく、番号も書かれておらず、下にフランスと書かれているだけでした
大きさは16.51 cmで、男性が花瓶を持ち上げているすごい構図になっています
で、なぜルネ・ラリックの作品だと疑われているかというと、
下の1921年の作品、”Quatre Figurines Femmes Formant Soutien”というロストワックス製法の作品にとてもよく似ているからなんです。
確かに似ていますよね。。。
でも、こっちの花瓶にはちゃんとサインもあり、おまけに像は男性ではなく女性なんだとか。。。(~ヘ~;)
ほんとは検査をすればすぐわかるはずなんですが、その前に売られてしまい結局わからずじまいに。。。┗(-_-;)┛
いろンな意味で不思議な作品です
ルネ・ラリックのロストワックス作品④
次の作品はいわゆるユニークな形をしています
ではまたまた歴史の話を(^^)
1971年にイギリスの通貨が10進法化される前、
1パウンドは20シリングに相当し、20シリングは12ペンスに相当しました
つまり1パウンド240ペンスですね!
たぶんこんな情報ルネ・ラリックと無関係だろ!って言われる頃なので少し説明します
そもそもイギリス通貨の値はイギリスのペニーとスターリングシルバーのトロイパウンドとの割合が1/240
だったことから来ます。
このようにトロイは通貨の値の土台を作った重大な役割をもっています
本の分類などで使われるデゥーイ十新法システムが主流になってからはトロイは使われなくなってしまいました。
(トロイオンスはまだ宝石等の重さの測定に使われるそうですが)
こんな重要なトロイですが、その名前はフランスの田舎町から来ました
その名もトロワ!
今回はそのトロワで発見された花瓶の紹介です!
結局全然関係なかったじゃんなんていわず、 もう一回時間をさかのぼらさせてください
1930年ねルネ・ラリックは二つのよく似た作品をつくりました
CP 566 “Feuiles De Lierre Dentelees”と
CP 567 “Feuilles De Lierre Pointures” の二つです
CP 566 のほうは18㎝の高さで、下の写真がそれです
ちなみに、この項目の一番最初の写真が CP 567 です
ほんとによく似ていますよね(^^)
しかし、残念ながら最初の写真のCP 567 は保存状態があまりよくなかったそうです
多くの部分が欠けていて、特徴の葉の部分まで少しなくなっているとか
高さは17.2㎝で、幅もそれに近い値で、どっしりとしているそうです
デザイン的にはいままでの作品とは違くて新鮮ですよね(^▽^)
ルネ・ラリックのサイン
通常、ルネ・ラリックの作品には彼のサインが刻まれています
先ほど紹介した花瓶にもサインがついていましたよね
で、ここで問題となるのはどうやって本物のサインかどうか見極めるかです(*^_^*)
ということで、今回は質疑応答形式でルネ・ラックスのサインについて話していきたいと思います。
Q.1 ルネ・ラリックの作品にはすべてサインが書いてあるのですか?
A. 基本的にはすべての作品にはサインがあるはずです。
しかし、稀にサインなしの物もあるそうです
ルネ・ラリックは多くの作品を残しているので、サインなしのため認識されていないものも多くあるのかもしれません。
だからといってサインなしのルネ・ラリックのほうが価値があるわけではないので、気をつけてください(^_^;
Q.2 正真正銘のサインには必ず ”R Lalique” と書いてあるんですか?
A. 必ずしもそのフレーズが書いてあるとは限りません。
ジュエリーなどには “Lalique” だけが書かれていることもありますし、”RL” とだけ書かれているものもあります
ほかにも写真のようなおしゃれなシンボルでサインされている作品も見つかっています。
ほとんどのサインは “R.Lalique” ですが、様々なものがあります。
まあどれも同じ意味なのですが(^^)
Q.3 同じモデルの作品はそれぞれに同じサインが書かれているのですか?
A. 同じモデルの中にも様々なサインがみつかっています。
特に人気だったり長い間生産されていた作品にはほんとにいろんなサインが書かれています
Q.4 ルネ・ラリックの作品には “Made In France”が刻まれているって本当ですか?
A. すべてではありませんが、刻まれているものもあります。
写真の”Palmes Vase”には “Made In France” って書かれていますよね
Q.5 一つの作品に複数のサインがされていることってありますか?
A. 全体的にみると少ないですが、多くの作品には複数のサインがあります
分けると3つのタイプに分けられます。
タイプA → 二つ以上の読みやすいサインがある
タイプB → 一つが削れたりなどして読みにくくなり、新たにサインされたもの
“Escargot Vase” や写真の “Courges Vase”などはそんなタイプです
タイプC → 機械の不調などで複数回サインされたもの
先ほどの”Courges Vase” はタイプBとCの融合で、このモデルにはよく複数のサインがみられます。
6回もサインされた作品があるんだとか
Q.6 サインが”R Lalique France #888″だったとき、数字はどういう意味ですか?
A. 数字はモデルナンバーです
#888の場合は”Sauterelles Vase” ですね
Q.7 どの作品もフランスの文字が刻まれているのですか?
A. そうとも限りません。
早い時期の作品にはフランスは書かれていません
おそらく1930年代の関税法以来アメリカが輸入品に製造国を明記することを義務付けたことが初めだと思われます。
現在もそうですが当時アメリカは世界の経済の中心だったので、多くのルネ・ラリックの作品がそこにいきわたり、フランスと作品に書き始めたのでしょう
Q.8 ”R. Lalique” ではなく “Rene Lalique” とサインされてものはありますか?
A. ないとは限りませんが。。。
今のところ見つかってはいません(∵)
Q.9 作品はふつうどこにサインされているんですか?
A. 作品の底だったり、デザインに直接かかれていたり、横だったり作品が入っている箱の淵など様々です
Q.10 ルネ・ラリック死後の作品で彼のサインがされているものはありますか?
A. 第二次世界大戦後、ルネ・ラックスのサインが書いてある型で作られた作品はありますが、区別がつくように必ず違うサインが書かれています。
“Lalique France”、”CREATION” などのサインがあったら戦後に作られたものです
このようなサインのある有名なモデルには、”Perche Car Mascot”、”Meudon Box”、”Sanglier Car Masoct”などさまざまです。
まとめると、ルネ・ラリックのサインは実に多彩ですよね(^^;)
偽物と見分けるの難しいので、要注意です!
本物と偽物の見分け方
さて、ルネ・ラリックのサインに関しては一通り話させてもらったので、
次はレベルアップしてどうやって本物かどうかを見極めるかを説明したいと思います(^▽^)
この花瓶を使って、一緒に偽物かどうかを判定していきましょう。(*^_^*)
本当は手にもって検査がするのが一番ですが、
しょうがないので今回は写真に ズームインとかして見てみてください
まずは下の写真から
ふつう、ロストワックス製法は作り方が作り方のため完璧ではなく所々傷や跡が残っているのがふつうです
でも、この花瓶ロストワックスで作られたというよりも酸か砂などできれいに摩ってあるように見えます
この写真からサインも見えますね
サイン自体ロストワックスの時代のものではありませんし、ふつうのルネ・ラックスのサインではありません
でもそんなことふつうはわかりませんよね?
しかし、よく見てみるとサインが少し磨かれていることには気づくかもしれません
これはロストワックスで作られたものにはふつうありません
次に花瓶の底に着目してみます
先ほども説明したように、ふつうロストワックスで作られたものには指紋だったりガラスの中に破片が入ってしまっていたりと様々な不完全な要素があるのがふつうです。
でもみてください、この花瓶の底の美しさ!
きれいに磨かれ、平になっています
もうこれだけで少し怪しくなってきました
もちろんすべてのロストワックス作品がきれいに磨かれていないとは断定できませんが、
ここまでスベスベだと怪しいです(-д-;)
感覚的な話ですが、そもそも底のデザインはルネ・ラリックっぽくありません
次に形に着目してみましょう
形から、おそらく “Ceylon” や “Rampillon”などのような金型を当てて作ったものでしょう
金型は押した後出さなければいけませんから、このようにできた花瓶は基本的に上のほうが大きくなります
また、型を下に押して作られるため、外に模様があっても内側はスベスベになります
(作成中の温度の関係ですこしできものができるケースもありますが、模様ほどではありません)
それに対し、ロストワックスで作られたものは型に金属を入れてつくるので、「空洞」っぽくなります
おまけに、内側はスベスベにならず外と同じ模様ができます
もちろん実際に手にもって内側をみないとそんなことわかりませんが、
写真からは少なくとも上部が膨らんでいることがわかりますよね
最後にデザインの話を
見やすいようにもう一度先ほどの写真をおいておきますね
このデザインはルネ・ラリックの”Quatre Feuilles De Rhubarbe (CP14)”になんとなく似ています
ちなみにパリの Musee des arts decoratifs に展示されています
博物館が1913年にルネ・ラリックから直接買った有名な品物で、
博物館によるとほかにないユニークな作品だそうです
わざわざ博物館に売った素晴らしい花瓶をルネ・ラリックがコピーをつくって売るとは考えにくいですよね
写真だけからのため、人によって分析は違うと思います。
でも、結論をいえばこの花瓶は買わないほうがいいですよね
まあでも、判定はとても難しいことです
この先騙されないためにも、この二つのことを覚えていてください(^^*)
まず、売り手の感情や動機ではなく、作品に集中してください
相手の心を読もうとするよりも、冷静に作品を分析するほうが確実です
そして、あたりまえだとは思いますが、
花瓶の名前や説明には騙されず、自分で結論を導いてみてください(^^)