ロレックス・デイトナの歴史
ロレックス・デイトナの歴史
「ロレックス・デイトナ」は「ロレックスオイスターパーペチュアルコスモグラフデイトナ」を正式名称とする、その人気と同様に興味深い歴史を持つクロノグラフです。誕生から50年、世界でも指折りの認知度を持つこの時計は全く古びていません。しかしなぜこのコスモグラフデイトナは多くの人に認知され、影響力があるクロノグラフなのでしょうか。
「デイトナ」誕生まで
ロレックスによってデザインされ、「コスモグラフ」という想像力に富んだ名を付けられ1933年にデビューを果たしたこの時計は、一定距離の平均速度を算出するタキメーターや距離を計測するテレメーター、脈数を測るパルスメーターといった機能がダイヤルに搭載されたブランド初のクロノグラフです。続いて1939年には、頑丈な防水性のオイスターケース、信頼性と正確性で知られる手巻きのムーブメントを備えた最新モデルに進化しました。当時、自動巻きのクロノグラフを製造するという技術の壁を超えられるブランドはありませんでした。
1955年、ロレックスはRef.6234を発表します。ダイヤルには「コスモグラフ」、「デイトナ」の文字はなく、ただ「クロノグラフ」と銘打たれていました。
ダイヤル外輪にタキメーターを配し、テレメーターは内輪に設置されました。
ロレックスはこのモデルを1961年の生産終了まで年間約500本製造しました。1960年代初頭には200ドルで販売されましたが、他のメーカーがクロノグラフ専門として長いキャリアを持っていたため、このモデルを含めロレックス製のクロノグラフは販売店の棚で売れ残る日々が続き、成功とは言えませんでした。
Ref.6234
Ref.6238はデイトナの実の親といえるでしょう。この時計は特に「プレ・デイトナ」と呼ばれています。
第一期のものはRef.6234と大きく違う点はありませんが、第二期のものはバトン針と切子面のあるインデックス、単色ダイヤル(シルバー、ブラック、アルドアーズ)を採用したより現代的なスタイルを導入し、飛躍的な変化を遂げました。
タキメーターがダイヤルに残された一方でテレメーターは取り払われました。ベゼルには直径37mmのケースが取り付けられ、磨き上げられた滑らかなものになりました。バルジュー製のキャリバー72クロノグラフムーブメントはロレックスによる変更を加えられ、1965年から1967年にかけて72Bへ、それから722へと改称されました。
プレ・デイトナの中でも、ステンレススチールケースのブラックまたはシルバーダイヤルの珍しいモデルは現在20,000ドル以上で取引されています。
Ref.6238
「デイトナ」名前の由来
ハンス・ヴィルスドルフによってロレックスが創業された1905年ごろ、時を同じくしてドイツやアメリカの自動車業界が活気を呈するようになりました。高級車と洗練された時計には類似点が多数あり、ロレックスと自動車レースの結びつきにもまた注目すべき点があります。
デイトナとはフロリダ州にある街の名前です。
最初の自動車レースはデイトナビーチで1902年に開催され、それ以来多くの速度記録が生まれました。
この街で「デイトナコンチネンタル」の名前で行われた大会の第一回より、勝者にはトロフィーに加えてロレックスの腕時計が贈られています。
イギリス出身のマルコム・キャンベルはこの界隈で最も成功を収めたレーサーの一人で、地上での世界記録を打ち立てた1930年代にはレース中でも日常生活でもロレックス・オイスター(クロノグラフではありません)を着用していました。キャンベルはロレックスに感謝状を送り、走行中に荒い扱いを受けたにもかかわらず動き続けたオイスターケースの耐久性に感服したことを伝えています。
マルコム・キャンベルの功績と生き方はロレックスと創業者ヴィルスドルフに強い印象を与え、多くの点でロレックスのライフスタイルを象徴していると思われています。そのため彼はロレックス最初の公式アンバサダー(宣伝大使)になりました。この関係性は長い間続き、マルコム・キャンベルモデルのロレックスも造られました。
ロレックスは1962年、レースの公式タイムキーパーを務めるようになります。
1963年、ロレックスは新世代のクロノグラフ、Ref.6239を製作します。
Ref.6239はダイヤルの外見に二つの重要な変化を取り入れました。
ひとつはメインダイヤルとサブダイヤルに正反対の色を使用したことです。この結果ダイヤルはそれ以前のロレックス・クロノグラフのものよりもスポーティで力強い見た目となりました。
もうひとつの大きな変化はタキメーターの目盛りをベゼルに刻み込んだことです。ベゼルの目盛りは当初300まででしたが、のちに200までに変更されました。
これにより平均速度計算用のタキメーターが読み取りやすくなりました。
Ref.6239
このような機能的特色は当時の難関であった「視認性」を達成する助けのひとつになり、その技術と競技に対する美学によって、この時計はすぐにモータースポーツで使用される時計の機能のひな型となりました。
最初はデイトナという名前ではありませんでしたが、名高いデイトナのレースとの提携を強調するためにロレックスはこのモデルに「デイトナ」という愛称を付け、ベゼルの上のタキメーターはレーサーの人気を博しました。
「デイトナ」定着
デイトナという名前は続くモデルにも常に表記されていたわけではありません。
Ref.6240は現在の標準であるねじ込み式のボタン類を搭載した完全防水のクロノグラフです。このモデルにはアクリルのはめ込まれた金属ベゼルも初めて採用し、ケース直径は37mm、1969年までステンレススチールでのみ製造されました。『OYSTER』という表記が『ROLEX』と『COSMOGRAPH』の間に印字されています。Ref.6240はデイトナの中でも特に貴重なモデルのひとつです。
Ref.6241でもロレックスはアクリルはめ込みのベゼルを採用していますが、Ref.6240のようなねじ込み式のボタンは採用されませんでした。そしてこのモデルからダイヤルに『DAYTONA』の名前が表記され始めます。このダイヤルはもともとアメリカで販売するモデルのために別に用意されたもので、アメリカの子会社の要請によるものでした。
『DAYTONA』は当初『COSMOGRAPH』の下に表記されていましたが、この表記は徐々に全てのダイヤルに使用されるようになりその後現在の位置、6時のサブダイヤルの上に移動されました。
同時期にロレックスは「エキゾチックダイヤル」と呼ばれる新しいダイヤルデザインを取り入れます。
特徴として、
・サブダイヤルと色を合わせたダイヤルの外輪
・中央で交差する十時線とブロックが描かれたサブダイヤル
・9時の位置のスモールセコンドは通常モデルの20、40、60の代わりに15、30、45、60が印字
が挙げられます。
手巻きクロノグラフ
1970年から1971年にかけてロレックスは、37mmのケースに収められた新しいムーブメント、キャリバー727に合う4つの新しいモデルを発売します。
Ref.6262とRef.6264は押し込み式のボタンとメタルベゼル(Ref.6242)、ブラックアクリルはめ込みベゼル(Ref.6264)を採用しています。これらのモデルは1970年から1972年まで製造され、ダイアルはホワイトまたはブラック、サブダイアルはそれぞれ対比をなすようにブラック、ホワイトです。
Ref.6263とRef.6265は代わりにねじ込み式ボタンが再び採用され、ベゼルRef.6263がアクリルはめ込み、Ref.6265がメタルベゼルとなっています。ステンレススチールまたはゴールドを選ぶことのできるこれらのモデルは手巻きムーブメントの最後のモデルで1971年から1988年までされました。ねじ込み式のボタンとリューズにより、防水性は50mから100mへと向上しました。
Ref.6263
Ref.6265
人気を飛躍させた愛好家
ポール・ニューマンはデイトナを着用した人物の中では最も有名です。
1972年から2008年の死去まで、映画スターポール・ニューマンは何度もその腕にロレックス・デイトナを着けて写真を撮られました。
彼の最初のデイトナはブラックダイヤル、ホワイトサブダイヤルのRef.6263、エキゾチックダイヤルではなくスタンダードダイヤルのモデルでした。
1972年にレーサーとしてのキャリアをスタートさせた時、妻ジョアン・ウッドワードはニューマンにコスモグラフデイトナの中でも、エキゾチックダイヤルの貴重で高級なモデルRef.6239を贈りました。
同じ年ニューマンはまた、のちに何度も使用されることになるポートレートでRef.6239を着用したものを撮影されます。ニューマンはこの写真でデイトナにレザーのミリタリーベルトを合わせています。これは長年に渡って彼のお気に入りの選択肢となりました。
ニューマンはロレックスのアンバサダーでもなければロレックスと何らかの繋がりのある人物というわけでもありませんでしたが、彼は熱心なロレックス愛好家でその後ずっとエキゾチックダイヤルのデイトナを「ポール・ニューマン・デイトナ」と呼ぶのが一般的になりました。特にロレックスがオリジナルとしてラインナップに組み込んだRef.6239,6241,6262,6263,6264,6265などにニューマン・デイトナのエキゾチックダイヤルが存在します。
2013年、ジュネーブで開かれたロレックスをテーマに置いた特別オークションでクリスティーズというオークションハウスに出品された1969年製Ref.6263のスチールモデルは989,000スイスフラン(約1,089,186ドル)で落札されました。この時計は1978年に売却されるまでスイスの販売店に眠っていたものです。
3年後の2016年、フィリップスオークションで貴重なコスモグラフデイトナ、1969年製「ポール・ニューマンオイスターソット」のRef.6239のケースバックにRef.6263の刻印がされたものが出品、750,000~1,500,000スイスフランと予想されていたところ1,985,500スイスフランで落札されました。イタリア語のニックネーム「オイスターソット」、その意味するところ「下に隠れたオイスター」は『COSMOGRAPH』の下に『OYSTER』が表記された貴重な初期モデルだったためにそのように呼ばれました。
これらの記録は2017年10月26日ニューヨークで行われたオークションでフィリップス・オークションハウスが出品した、他ならぬニューマン自身が実際に着用した「ポール・ニューマン」コスモグラフデイトナによって破られます。開始から12分、この時計は17,709,894スイスフラン(約17,752,500ドル)という驚くべき金額で落札され、オークションで落札された腕時計市場最高額の記録を打ち立てました。
自動巻きへの進化①
1987年辺りまで、デイトナにはバルジュー製をベースにしたムーブメントのマイナーチェンジを除き大きな変更が加えられませんでした。バルジュー製手巻きムーブメントの名作キャリバーはデイトナのウィークポイントでした。
クオーツ時計が発明され、その容易さと正確性手巻き時計、特にねじ込み式のボタンによって一手間加わった手巻き時計を毎日巻くことを煩わしく思う人は多くいました。結果、手巻きのデイトナの需要は降下し、売れ行きの鈍さから販売店に大幅に値下げされるものもありました。
機械式時計が過去の遺物となりかけた1988年、ロレックスは自動巻きのデイトナを発表します。ロレックスはムーブメントに1969年に誕生したゼニス社のエルプリメロを用い、大幅な変更を加えます。ゼニスによるこの優れたムーブメントは、時計業界のなかで唯一ロレックスの高い品質基準に敵うものでした。
・脱進機は大きいものに変更され、可変慣性テンプ、テンワを制御するピン(マイクロステラナット)、ブレゲの巻き上げヒゲを使用したヒゲゼンマイによってより好ましく高級な構成になり、正確性が向上
・テンプの振動数が36,000から28,800に減少し、手入れの回数を軽減
・日付機能の廃止
元となったゼニスのムーブメントの50%を変更して生まれたこのムーブメントは新たにキャリバー4030と名付けられました。
このムーブメントを用い、ロレックスはRef.16500シリーズの製造を始めました。
風防にサファイアクリスタルを導入したことをはじめ、外見上の変更も加えられます。
・サブマリーナーのようなロレックスの他のスポーツモデルの影響を受け、ケースの直径が37mmから40mmに
・クラウン(リューズ)を守るための『ショルダー』
・ダイヤル表面はラッカーで塗装され光沢のあるものに、金属性のインデックスは夜光塗料を塗布されたものに
・タキメーターベゼルはより幅広くなり、目盛りが400までに
・サブダイヤルの外輪は反対色で塗られ、金属のリングで縁取られる
Ref.16520
以降のデイトナには全てねじ込み式のボタン類が採用されています。
この新たなクロノグラフはステンレススチールのRef.16520、ステンレススチールとゴールドの組み合わせのRef.16523、ゴールドのRef.16528の3つのバリエーションで入手が可能でした。
こういった変更点がデイトナを、機能的ではあるが大人しい時計から見事なステートメントピースへと進化させました。
この大幅モデルチェンジは即座に成功を収めました。ロレックスのタイミングは完璧で、腕時計の収集というものは1988年に最高潮に達しました。手巻きデイトナの製造終了と新シリーズの製造開始に伴う熱狂によって双方のデイトナに対する需要が急上昇します。
Ref.16520の成功は特にすばらしいものでした。ゼニスの基礎ムーブメントの供給が限られていたために製造数も限られ、すぐにRef.16520は多くの人が欲しがるカルト的な人気の時計になりました。
購入価格やオークションの落札額は希望小売価格の2倍になり、デイトナの旧モデルにも多大な影響を与えました。
そのほかにもさまざまなバリエーションのモデルも製作されました。
1991年、ロレックスはイエローゴールド、光沢仕上げの亜鉛メッキブルーダイヤル、ベゼルの目盛り400のRef.16528スペシャルシリーズをわずか10サンプル製作します。ロレックスの重役向けに贈る予定で製作されたのでこのモデルはチェアーマン(取締役)デイトナと呼ばれることもあります。
レザーベルト、ダイヤモンドなどの宝石をあしらったダイヤルの2モデル、イエローゴールドのRef.16518、ホワイトゴールドのRef.16519をはじめ、ダイヤルやベゼルに貴石を使用したさまざまなモデルも製作されました。
Ref.16519
しかし、キャリバー4030は100%自社生産のムーブメントではありませんでした。
自動巻きへの進化②
さまざまなモデルを製造する一方、ロレックスは完全自社生産のムーブメント製作を開始します。そして2000年のバーゼルフェア(宝石と時計の見本市)で新ムーブメントを使用したデイトナが発表されました。
5年に及ぶ開発の末に産まれたキャリバー4130は強健性、効率、正確さ、点検のしやすさの点で改善が施された名人芸ともいえるデザインのムーブメントです。それを可能にしたのはロレックスの高性能な動力伝達方式「垂直クラッチ」が結合された機構です。
クロノグラフのメカニズムはそれぞれ分かれたサブシステムとして考えることができます。一度稼動したクロノグラフは「クラッチ」を介して各インジケーターに動力を供給します。
最も広く使用されているのはロレックスの全てのクロノグラフで用いられていた「水平クラッチ」でした。水平クラッチのクロノグラフは全体的な機能としてはうまく動作し、見た目にも魅力的なものでした。しかし、水平クラッチにはいくつかのデメリットがありました。
(1)時計が固定されるとテンプの振動数が減少し、正確性が低下する。
(2)バックラッシュ:クロノグラフの動作開始時または終了時にはムーブメントの歯車とラテラルクラッチの歯車が不完全にかみ合うことでクロノグラフ秒針がよく飛ぶ。
これに対してキャリバー4130の設計では垂直に接続したクラッチがクロノグラフ秒針の完全に正確なスタートとストップを可能にしました。スタート・ストップ・リセット時に起こる不要な震えはどの針でも起こらないようになりました。「垂直クラッチ」のおかげで時間計測の正確性に影響を及ぼすことなく連続使用することも可能になりました。ロレックスが長年に渡り優れた計時性を追求したことを考えると、垂直クラッチの使用は道理に敵っていたと言えるでしょう。
スマートなデザインは設計の随所に見受けられます。ロレックスはムーブメントの両側に分かれた二つの機構であったクロノグラフのカウンターシステム(12時間積算計、30分積算計)を統合しその占める空間を減らすことで大幅に簡略化しました。これによって空いたスペースを使用し、メインスプリングが収納された香箱のサイズを上げ、キャリバー4030のパワーリザーブ54時間に対しパワーリザーブ72時間をもたらしました。また、より正確な計時のためにテンワは直径を差し渡す2点でマウントされ、ケースの両側に固定されたことで耐衝撃性と耐振動性が大幅に上昇しました。
上述の点も踏まえてキャリバー4130の『内部』についていくつか知られていることは、
・4030に使用されたネジ40種に対し4130では12種
・4030に対しパーツ数20%減
・他ブランドで使用された垂直クラッチに比べても点検が容易。点検のたびに注油はされるが、分解と修理も簡単に
・4030ではオーバーホールが必要出会ったのに対し、メインスプリングはムーブメント全体をケースから取り外さなくとも交換が可能
・ムーブメントの両側まで差し渡された三つの平行クラッチ、最大五つの偏心輪を調整しなければ完全に機能しない4030に対し、パーツは全てムーブメント側に搭載され、偏心輪は一つのみしか必要としない。
・複雑なリバーサー(回転錘の動きを整える)を使用し止まりがちだった4030のものに比べ自動巻きの効率が68%向上し、パワーリザーブが上昇
などです。
4130の搭載されたRef.116520シリーズは判別が付きやすく、偽物を作る業者が精巧なコピーを作るのが大変難しくなりました。
Ref.116500
ムーブメントの変更によってダイヤルも少し変化しました。
スモールセコンドは6時の位置に移され、12時間積算計の位置と逆になりました。3時と9時の位置のサブダイヤルはわずかに押し上げられました。大きくなった針とインデックスのおかげで特に暗い場所での視認性が増しました。
1994年に始めて使用されたフリップロックセーフティクラスプ(留め具)を継続して使用しながらもベルトとの構造性の一体感を高め、この部分の使用感も向上しました。新しいクラスプは内部にイージーリンクを導入し、ベルトのサイズ調整をより早く、容易にしました。
現在のデイトナは全てキャリバー4130を動力としています。
現在まで
Ref.116520のバリエーションには、
・ステンレススチールとゴールドのRef.116523(2000年)
・イエローゴールドのRef.116528(2000年)
・ブラックまたはホワイトダイヤル、数字がダイヤルの方に向くように目盛りをつけたベゼル、ホワイトゴールドのRef.116509(2004年)
・ロレックスによって造られた特別なピンクゴールド合金、エヴァローズゴールドのRef.116505(2008年)
などがあります。
このような歴史を辿ったデイトナの内、メインとなるカラーバリエーション、
プラチナ、ゴールド、ステンレススチールの3種類を並べたとき、そのうちのどれが最も予約待ちをされているでしょうか。希少な金属を用いたもののほうが人気が高いように思われますが、実際はそうではありません。プラチナもゴールドもよく注文されますが、全く手に入らないというわけではありません。ステンレススチールこそデイトナで最高の人気を誇るモデルです。
長年に渡り、新品のデイトナのステンレススチールモデルをロレックス公認ディーラーから購入することは不可能でした。
皮肉なことにロレックスは数十年間ステンレススチールのデイトナの広告を出していません。
もう一つ皮肉なことに、ステンレススチールのデイトナが誕生してからしばらくの間ロレックスはこの時計を捌けませんでした。ステンレススチールのニューマン・デイトナ、エキゾチックダイヤルモデルがディーラーの棚で5年、あるいはそれ以上の間居座り続けることも珍しくありませんでした。
2013年には同じセラミックベゼルにアイスブルーのダイヤル、チェストナットブラウンのインデックス、デイトナコスモグラフプラチナムを発売し、世の賞賛を浴び続けるデイトナの50周年を記念しました。
2016年のバーゼルフェアで、サビに強くすり傷もほぼ防止するブラックセラミックのセラクロームベゼルがついに人気モデルRef.116500シリーズで使用されると発表されました。ホワイトラッカーダイヤルとブラックで縁取ったサブダイヤル、ブラックラッカーダイヤルとグレーで縁取ったサブダイヤルの2種類で発売されました。
ロレックスを代表する流儀である精巧な調整と技術の革新によってデイトナは現在でも高級クロノグラフの第一位であり続けています。