フランスからの贈り物 可愛らしいブルボンキーホルダーのご紹介
アンティークのキーホルダー ブルボンキーホルダーの世界
○ブルボンのキーホルダーは多種多様
角ばったフォルムに左右に揺れ動く小物の世界。何千という世界を作りだしたブルボンのキーホルダーは今も多くのコレクターに愛されています。
1960年代、広告の媒体のメインがTVに切り替わるまでのほんの10年ほどの期間にも関わらず、一言でまとめることができないほど数多くのキーホルダーが作られました。短期間でそれだけ多くのキーホルダーが作られたということは、フランス人の心をがっちりと掴むほどにクオリティが高かったということです。
今回はそんなブルボン社のキーホルダーの作品の特徴、独特なシリーズをいくつかご紹介します。
○物語を表現するサビニャック
ブルボンキーホルダーのデザインを手掛けた語るべき人物がいます。レイモン・サビニャック氏はフランスで最も精力的に活動したアーティストとして有名です。彼は表面と裏面の2つの世界を別々に作り出すことで、物語を生み出すことに成功したのです。
頭痛薬アスプロはフランスでは有名な薬で、この薬の広告のデザインを手掛けたのがサビニャック氏です。表面には苦痛の顔を浮かべる人の顔と、その人の頭の中をガヤガヤと動き回る車が描かれています。
車が左右に動く様子で頭痛を上手く表現しています。
裏面にはアスプロを飲んで『はぁ!』と安堵のため息を表現する文字が大きく描かれています。このように表と裏で別々の形を描くことで時間の経過を表現し、そこに物語があるように感じさせてくれます。
サビニャック氏のこの手法は非常に人気で、今でも彼の作品はコレクターの間でかなりの高額で取引されている様です。
○リアリティを追及するクオリティ
フランス人の国民性からか、ブルボンキーホルダーのデザインではありのままを表現することが多く、デフォルメされていることが少ないです。特に顕著なのが動物の絵です。
ベオグラードの飼料メーカーである『ガロファック』のデザインでは、
鶏や豚が3匹揃ってエサを食べている姿が見られます。
緑豊かでのどかな田舎の風景に、リアルの鶏の姿があるからこそ、
フランスの現実的なイメージをより強く印象付けさせてくれます。
またフランス北部で有名な新聞の『ラ・ヴォワ・デュ・ノール』では、鶏を新聞紙で表現しています。
鶏としての姿も、新聞としての姿も一切崩すことなく、その2つを同時に精巧に描いています。
動物の絵が描かれている作品で外せないのが『ニッパー』という犬の作品です。
『パテ・マルコーニ』、現在のレコードレーベル『EMI France』の前身の企業の広告で使われている
マスコットキャラクターです。
蓄音機の前でお座りをしているニッパーの、蓄音機からの音を熱心に聞いている様子が左右に傾けることで見れます。
裏面を見るとフランス語で主人の声と書かれています。
実は蓄音機から流れているのは音楽ではなく、既に他界した主人の声だったのです。
この何とも言えない悲しさがニッパーに対する愛しさを芽生えさせるため、
ブルボンキーホルダーの中でも非常に人気が高いです。
動物の他にも食べ物や飲料系の広告でもリアリティを追及しています。
フランスで有名なお菓子メーカーである『リュ』で作られている『プチ・ブール』は、サクッとした軽い歯触りにバターの素朴な味が生かされたビスケットで、フランス国民に親しまれています。
このデザインも商品の形そのままに描かれていて、なおかつそこに更なる価値を付けるかのような金色をベースにすることで、企業側のこのお菓子に対する絶対の自信を裏付けています。
○液体表現の鍵は気泡
飲料水やお酒などの商品も形そのままにデザインしてました。
ミネラルウォーターのエビアンにコニャックのフロミー、ブランデーのクルボアジェと様々なボトルを描いていますが、こちらでは今までのような中の小物を動かす仕組みに変えて、気泡をボトルの中に入れています。
この気泡が動くことで、ボトルの中に液体が入っている様子をよりリアルに表現しています。
特にコニャックのフロミーでは、似たようなデザインになりがちなボトル系のデザインに置いて独特な味を醸し出しています。背景を透明色ではなく青くすることでコニャックの色合いを引き出しています。
さらにボトルの中には琥珀色の液体を入れています。フロミーかブルボンかはわかりませんが、この作品のデザインを考えた作者のこだわりがよくわかりますね。
○大きな車には大きな世界を
リアリティを追及するため、キーホルダー自体の大きさを変化させることもあります。
それが良くわかるのが特殊車両系の広告です。
ダンプカーやクレーン車などの現場作業用の車両メーカーの
マレルでは、キーホルダーにそのままダンプカーを描いています。
しかしその大きさは標準のものより倍くらい大きくなっていて、特殊車両のダイナミックさを上手く表現しています。コンテナや荷台が動く仕掛けと相まって、他のキーホルダーとは一線を画する作品になっています。
○独特なデフォルメの世界
ブルボンキーホルダーのデザインはとにかくありのままの姿を映すことにしています。
しかし例外はあるもので、デフォルメされたデザインも中にはあります。
2本足で立つ犬やアライグマ、白いチョークで商標を書く小熊など、動物を基に書かれたデザインですが、リアリティがほとんどないのがわかりますね。ソラックの広告で書かれた犬は黒光りで少しおっかない顔をしています。
冷蔵庫を製造しているブリジデールのアライグマも、顔だけで見ると少し不気味に思うかもしれません。
寝具メーカー、ウルソンの小熊も目が白い点で表現されているだけでやはり日本的なかわいらしさとはかけ離れています。
しかし曲線的に描かれた全体的なフォルムには少しかわいらしさを感じる所もあります。
デフォルメの仕方にも国民性が出ていることが、ブルボンキーホルダーのデザインからわかるようになっているのです。
楽しませるだけでなく、そういった作品に関わる裏側まで覗けるのが最大の魅力だと感じる人も多いそうです。
○小さな体に大きな魅力
ブルボン社のキーホルダーの良さは、とにかく手が込んでいる点です。
左右に傾けることで中身の小物が動く仕掛けにしても、ボトルの中に気泡を入れることで液体を表現する技法にしても、表と裏で物語を生み出す設計にしても、当時のフランス国民だけでなく今の世界中の人々も楽しませてくれます。
指先で持てる程度の小さなサイズに、ありったけの情報量を詰め込む、その製作者のこだわりと技術力が見えるからこそブルボンのキーホルダーを集める人は多いのでしょう。